大きな波紋を呼んでいる太田房江・参院議員の“選挙買収”工作疑惑(時事通信フォト)
本誌・週刊ポスト(5月30日号)で報じた参院選大阪選挙区の自民党候補、太田房江・参院議員の“選挙買収”工作疑惑が大きな波紋を呼んでいる。26日になって太田氏は今夏の参院選への立候補を断念すると書面で発表した。
週刊ポストは6年前(2019年)の参院選前、太田氏から500万円の資金提供の申し出を受けたという自民党大阪府連の有力者だった元市議会議長の証言を報じた。その場に同席したとされる地方議員は取材に「よく覚えていない」「事実無根」などと話したものの、今回の参院選をめぐっても、太田氏が自民党大阪府連の複数の元代議士に現金が入っていたと思われる封筒を差し出そうとして断わられたとする証言も得た。
大阪府連会長の青山繁晴・参院議員は本誌の取材にそうした情報があることを認めたうえで、「公認権は総裁にある。党本部が責任をもって調査すべきだ」と語っていた。
それに対して、太田氏は代理人弁護士を通じて「いずれも該当する事実はなく、全くの虚偽」とする回答書を送ってきた。太田氏本人は会見での説明などはしていない。本誌に証言した元代議士が改めて取材に応じた。
「私がお話ししたこと(太田氏から封筒を渡されかけたが、固辞した)はすべて事実です。それを否定するなら、本来は太田さんのほうから『第三者委員会を作って調べてくれ』と言うべきです。党本部も関係者全員を呼んで、弁護士も入れて聞き取り調査をすべき。私は(太田氏から申し出を受けた)日付などもちゃんとわかっているから、第三者委員会に聞かれたら、もちろんすべて証言します」
もっとも、自民党本部は迅速な対応を見せなかった。
森山裕・幹事長は5月13日の会見で「執行部として結論を出した」と、いったん参院選大阪選挙区で太田氏を公認する方針を明らかにしていたが、「党本部は15日に太田氏の公認を公式発表する予定だったところ、週刊ポストの取材内容が広がったため、ペンディングになった」(政治部記者)という情報まで出ていた。
果たして自民党は調査を進めているのか--。
自民党選対本部に連絡すると、「担当の者が終日会議、打ち合わせで立て込んでいる」との説明。質問状を送ると言うと、「送られても事務局のほうでは回答できませんので」と断わられ、「それでもと言うのであればこちらへ」と言われ、FAXで質問状を送ったが、締め切りまでに回答はなかった。
太田氏に記者会見で説明する予定があるのかなどについて聞くと、代理人弁護士を通してこう文書回答した。
〈「週刊ポスト」5月30日号に掲載されました記事にございます、同議員が資金提供を申し入れた等の記載はいずれも事実無根であり、既にその旨自由民主党にも説明済みであります。該当する事実はないことに尽きますので、記者会見等は予定しておりません〉
その後、参院選の立候補を辞退することを発表した書面では、その理由についてこう述べている。
〈最近、事実無根のいわれなき誹謗中傷を受ける中、不調を感じつつも精励して参りましたが、ここに来て大きく体調を崩し、強度のストレスによるストレス障害との診断を受けました。主治医からは、これ以上 政治活動を継続することは断念すべきとのご指導をいただき、苦渋かつ困難な決断ではございましたが、先ずは治療に専念することといたしました。
様々な阻害行為等もある中、関係の皆さまから変わらぬご支援を賜り、出馬に向けて努力して参りましたが、このような状況に至り、残念でなりません。〉
石破首相自身のヤミ献金疑惑に続いて太田氏の買収疑惑、そして江藤拓・農水相の更迭も続いた。官邸・党本部の説明責任が問われていることは間違いない。
※週刊ポスト2025年6月6・13日号