クリーンナップを任される2年生の内海竣太(産経ビジュアル)
不調の要因は「飛ばないバット」と「スカウティング」か
近年の甲子園では2022年春こそ制したものの、昨春は準々決勝で西谷監督の母校である報徳学園に敗れ、昨夏は小松大谷を相手に0対3と完封負けを喫した。小松大谷のエース・西川大智が投じた球数はたったの92球。大阪桐蔭打線は文字通り手玉に取られ、為すすべなく聖地をあとにした。
さらに大阪大会、近畿大会でも苦しい戦いが続いている。昨春は大阪学院大高校に敗れ、昨秋は大阪大会決勝で履正社に敗れ、近畿大会では初戦で滋賀学園に敗れた。その結果、今春はセンバツ出場を6年ぶりに逃した。そして今月、近畿大会1回戦で東洋大姫路にコールド負けという完敗を喫した。
もちろん、弱体化が一気に進んでいるとは思わない。しかし、勝つ時は豪快に打ち勝ち、敗れる時には劇的に散る――そんな戦いを続けてきた大阪桐蔭が、打線が振るわずにあっさりと敗れる試合がどうしても目に付いてしまうのだ。
要因はいくつか考えられるだろう。まずは、2023年春に導入された新基準バットの影響だ。全国から集まった有望選手がその身体能力を活かしてブンブンとバットを振り回し、たとえバットの芯を外したとしても外野手の頭を越える打球を放ってきた大阪桐蔭打線が、飛ばないバットになったとたんに停滞。強振することよりも、西谷監督が言うように「鋭くコンパクトに」振り抜いてミートすることが重要なバッティングの新時代に対応が遅れているのかもしれない。
もう一点は、大阪桐蔭を常勝軍団たらしめてきたスカウティングの不調だ。ちょうど3年ほど前から全国のトップ選手がこぞって大阪桐蔭に進学するような寡占状態ではなくなり、一昨年には有望選手が揃っていた東海中央ボーイズの中心選手5人に西谷監督が声をかけ、その全員に断られるという事態も起こった。その時に断られた現高校2年生のなかには、大阪桐蔭が出場できなかった今年のセンバツを制した横浜の一塁手で次期主将候補の小野舜友や外野手の江坂佳史、準優勝した智弁和歌山の捕手・山田凜虎が含まれるというのもなんとも皮肉だ。