清楚なワンピース姿を披露する(インスタグラムより)
ゴールデン主演も可能な高い好感度
のんさんは俳優として最も多くの目にふれられる地上波ドラマに出演していなかったものの、多くのCMに出演してきたように「好感度は下がらず高水準を保っている」という稀有な存在。持って生まれた才能や華だけでなく、クリーンなイメージがあり、さらに逆境でも好きなことを貫く精神的な強さなど応援したくなるところが多いのでしょう。ネット上には、むしろ地上波ドラマに出なかったことで、鮮度は保たれたまま、ほのかに大人びたところを感じるなどの「新たな魅力を発見した」という声も散見されます。
ただ、のんさん自身は俳優やアーティストとしての活動に加えてCM出演などもあって多忙なだけに、来たる地上波ドラマのオファーにどれだけ応えていくのかは未知数。9月には福岡、大阪、仙台、東京とめぐるライブツアー、10月には吉永小百合さんが演じる主人公の青年期を担った映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』が公開されるなど、充実一途の中、しばらくは身動きの取りやすいゲスト出演や単発ドラマ出演に留めるのか。あるいはメインキャストとしてのレギュラー出演。さらに、いきなりゴールデン帯の主演に挑むのか。
どんなジャンルとテーマのどんな役柄で、どんな共演者とスタッフの企画ならオファーを受けるのか。『キャスター』で見せた若手研究員の演技が見事だったこともあって、その決断は期待感を持って受け入れられるのではないでしょうか。
のんさんにとって唯一の懸念があるとすれば、長年民放の番組に出演してこなかったため、勝手なイメージに足を引っ張られることくらいでしょうか。『あまちゃん』で演じた天野アキ、さらにロケ地となった岩手との交流を続けているほか、数々のCMで笑顔を見せてきた好感度は芸能界最高クラス。だからこそ天野アキのイメージを引きずる人もいるでしょうし、「こういう素晴らしい人」という先入観で見られることもあるでしょう。
そのイメージがいいからこそ、わずかな言動で「変わってしまった」「こんな人だと思わなかった」などと言われてしまうリスクと隣り合わせであり、バラエティや情報番組への出演には注意したいところ。一方、オファーを出して迎える制作サイドもケアすべきでしょうし、視聴者としても過去のイメージではなく現在の彼女を見るようにしたいものです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。