レアアースの管理体制を一層強化していくか(習近平/時事通信フォト)
中国産レアアースは、世界の供給量の約70%を占めているとされる。しかし、米中貿易摩擦の影響で中国政府がレアアースの輸出規制を強化した結果、国際市場での価格が急騰し、それに伴い密輸出が急増していることが明らかになった。この事態を受けて、中国政府は各地の採掘現場に対し、流出防止のための対策を指示しているという。香港紙「星島日報」などが報じている。
レアアースの管理は、軍事転用可能な「デュアルユース(軍民両用)」物資の輸出を統括する「国家出口輸出管制工作協調機制弁公室」が担当している。同弁公室は2025年5月9日、商務省、海関総署(税関)、公安省(警察)、国家安全省(情報機関)などの関係省庁と合同で、レアアースの違法な国外流出を防止するための専門会議を開催した。
密輸増加の背景には、中国政府が2025年2月にタングステンなど5元素を輸出規制の対象に加え、さらに3月には7元素を追加したことがある。これにより、計12元素が新たに規制対象となり、それに呼応する形で密輸の動きが活発化した。
会議では、「一部の外国組織と国内の不法勢力が結託し、密輸出の新たな手口を次々と開発しており、取り締まりをすり抜けようとしている」との危機感が示された。これを受けて、以下の3段階の対策が決定された。
第1段階:広西チワン族自治区、広東省、雲南省、貴州省、江西省、内蒙古自治区など、国境地帯に集中する採掘地において、公安省や国家安全省の監督要員を増員し、無許可採掘や越境採掘を厳重に監視する。
第2段階:採掘量と生産量を厳密に調査し、上部機関に報告される数量と一致しているかを確認する。
第3段階:関係企業の会計帳簿を精査し、横流しの有無を確認。不正が発覚した場合は、責任者を厳重に処罰する。
中国のレアアースをめぐっては米中貿易交渉の焦点ともなっているが、中国の採掘地は、東南アジア諸国に近接する地域に集中しており、地理的条件が密輸の温床となっている。今後も中国政府は、国家安全保障の観点から、レアアースの管理体制を一層強化していくとみられる。