最終話を控える『続・続・最後から二番目の恋』(番組公式HPより)
明らかに変わった千明の和平の関係性
次に最終話はどんな着地点に注目して見ればいいのか。注目したい着地点は主に以下の3つ。
1つ目は千明と和平の恋と関係性はどんな形で締めくくられるのか。このところ妹たち、弟、娘がひとり立ちするようなシーンが続き、第10話では和平と千明のみが残されそうなムードが漂いはじめました。しかも家だけでなく、千明の月9ドラマ企画は完成して提出され、和平は市長要請への返事を終えるなど、仕事面でもほぼ完結。2人に残されたのは恋と関係性の行方のみであり、どんな決断を下すのか。
これまで2人は「相手に依存するのではなく自分の人生と向き合いながら、相手が落ち込んでいたらさりげなく寄り添い、じっくり話を聞く」という距離感を保ちながら絆を深めてきました。恋人、家族、友人などの枠を超えた2人の関係性は、大人には心地よく心強いものであり、だから視聴者から支持されてきたのでしょう。
ただ、続・続編では第1話から和平が千明に「約束したじゃないですか。どんな形であれ、ずっと一緒に生きていくんでしょ。私とあなたは」と語りかけるなど、「こんなに素直な気持ちを伝え合う関係性だった?」「これはもはやプロポーズでしょ」などと驚く声があがるシーンが続きました。
そのため最終話の放送中は「このままでいてほしい」「はっきりと結ばれてほしい」という両方の声が飛び交うのかもしれません。また、和平が千明にプレゼントした還暦までの残り日数が書かれた日めくりカレンダーにも注目が集まりそうです。
2つ目は順風満帆すぎる周囲の登場人物が次にどこへ向かうのか。続・続編では「何も起きない日常の愛おしさを描く」ことに長けた岡田さんの脚本としては異例とも言える、いいこと尽くしの状態が続いています。
真平は長年悩まされてきた病気が完治、典子はグラビア撮影を経てエッセイ連載がスタート、万理子は脚本家として企画書を書き上げて自信が芽生えるなど自立の兆し、えりなは恋人の木村優斗(西垣匠)と鎌倉以外の海で働きながらゴミアートを作る旅をしたいと宣言。
「これ以上ない」というほどすべてが好転していく展開は、「ようやく実現できた続々編でシリーズ完結しても悔いはない」「シリーズのファンに登場人物のさらに幸せな姿を見せて安心させてあげたい」という岡田さんの思いなのか。それとも、もう一歩先の未来を見据えた最終話への振りだったのか。
さらなる続編フラグか完結フラグか
3つ目は最終話で『続・続・続・最後から二番目の恋』の可能性が提示されるのか。これほど多くの人々に愛されていることや、「日々を淡々と描く」という作風を踏まえると、その可能性を随所に感じさせるのも、明確に否定するのも、野暮なのかもしれません。
ただそれでも視聴者にとって“続・続・続編フラグ”を探す楽しみや、“完結フラグ”を見つけてしまう寂しさも、最終話における醍醐味の1つでしょう。放送中から放送後にかけてネット上に「これは次へのフラグでは?」「まさか完結フラグ?」などのコメントが書き込まれそうです。
ゆったりとした時間の流れと会話劇をベースにした岡田さんの脚本と、年月の流れをそのまま生かすプロデュースは、さらなるシリーズ化も可能な作風。しかし、ここに来て不安視する声がジワジワと増え、現時点で「最大の完結フラグ」と言われているのが17日午前に行われた最終話の先行試写上映会。ここに小泉今日子さんと中井貴一さんがサプライズで登場してトークショーを行い、「もうみなさんにお会いすることがないかも」などと語ったことを不安視する声が散見されます。
ネタバレになってしまうためここでは書けないのですが、幸か不幸か関係者から続・続・続編の有無にかかわる情報を耳にしました。しかし、それすら「良くも悪くも現時点での決断にすぎず、絶対的なものではないのでは」と思わせる待望論と制作の難しさの両方が当作には感じられます。
近い将来、『続・続・続・最後から二番目の恋』が放送されるかだけでなく、“チーム千明”の月9ドラマ企画『全てが君に微笑む』が本当に同時間帯で放送されても驚きはなく、もし実現したら脚本はもちろん岡田惠和さんではないでしょうか。どちらの際もヤエル・ナイムの挿入歌「Go To The River」を流し、視聴者をシリーズの世界観に誘ってほしいところです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。