「札幌のギャグ男」公式インスタグラムより
母さんも俺も、検査については何も言わなかった。でもお互いに、結果については予想がついていた。俺がトイレに離れている間、母さんに電話があった。
「ハルキくんの知能に、障がいが見つかりました」
母さんはすぐに兄ちゃんに電話をかけて、検査結果を報告した。トイレから戻ってきた俺は、少し離れたところからその様子を写真に撮った。なんでそんなことしたかはわからない。たぶんパニック状態だったんだ。声はほとんど聞こえなかったけど、母さんが何の話をしてるかはすぐにわかった。だって母さん、めちゃくちゃ泣いてたから。
診断名は、知的障害とパニック障害。自分は障がい者なんだって、そのときはっきりと理解した。「俺、特別学級に入るの?」帰りの電車で、母さんにそう聞いた。
「ハルキ、もう背伸びしなくていいんだよ。楽に生きていいんだよ……」母さんはそう言ったっきり、顔をそむけてしまった。
もう、みんなと同じ教室には通えない。通うなら、特別支援学級だ。そうなると周りからどんな目で見られるようになるか、想像するまでもなかった。頑張って保ってたカラ元気も、さすがに限界だった。俺は電車のなかで、わんわん泣いた。
「札幌のギャグ男」公式インスタグラムより
「特別支援学級」への葛藤と決断
「ハルキくんの知能は、小学3年生で止まっています」
後日、母さんは学校に呼び出されて、正式に報告を受けた。
特別支援学級に入るかどうか?
俺はしばらくひとりで考えることにした。編入を決めるまで、学校には来るなって言われてた。1日中、家でパワプロと妄想をする日々が戻ってきた。地獄の小学生時代に戻ったみたいだった。そんな日々が、1週間くらい続いた。
憧れの新庄は、ゲームの中でもスーパースターだった。それを見て、思い出した。俺はみんなの人気者になりたかったんだ。周りの人たちを、とにかく笑わせたい。そして一番笑って欲しかったのは、母さんだ。母さんを困らせることはしたくなかった。
「俺、特別学級に行くよ」
考えて考えて、母さんにそう言った。そうすれば、少しでも母さんを楽にしてやれるって思ったんだ。
(第2回に続く)
【プロフィール】札幌のギャグ男/1996年生まれ。北海道札幌市出身。中学校で知的障害・パニック障害の診断を受け、壮絶ないじめを経験。その後、時にはアウトローな道に進むも、HIPHOPとの出会いをきっかけにラッパーへと転身。現在は札幌市を中心に音楽活動を行っている。