問い合わせの多さに辟易し店から電話を撤去した(イメージ)
「まず、行列が出来ていてね。20年通って、こんなことは初めて。常連はほとんど高齢者だから、並びたくはないし、知らない若いお客さんばかりだから店に入るのも怖い。だんだん常連が行かなくなっちゃってね。大将も、今までみたいにゆったり出来ない、若いお客さんが次々に来てきついと気が弱っていった。それでやめたんだよ」(ラーメン店の常連客)
商売人にとっては、客は何よりもありがたい存在であることは間違いない。「うれしい悲鳴」という言葉があるように、客がどんどんやってくれば、どんなに忙しかろうと、いや、忙しいほど儲けが伸びるのが普通だろう。しかし、商売をやっている人全員がそう思っているとは限らない。自身の出来る範囲で無理をせず、ちょうど生活していけるくらいの水準を維持しながら商売を続ける、というパターンも少なくないのだ。だから、こうした人々にとっては、ありがたいはずのネット上の「グルメサイト」などは、逆に業務を圧迫する足かせにもなっている実情がある。
店から電話を撤去
「二人しかいないから、料理作ってお客さんの対応もして、出前もやってね。そこに、毎日何十件も問い合わせばかり入るようになってパンクした。もう、電話がうるさくてしょうがないから、線を抜いたよ」
千葉県某市で中華料理店を営む男性(70代)はつい最近、店にひかれていた電話を撤去した。
「元々電話番号は公表してなくて、出前の常連さんにしか教えていなかったんだけどね。誰かが、ネットに店の料理と一緒に電話番号まであげちゃった。本人はよかれと思ってやってくれたと思うよ。でもさ、電話の応対だけで一杯一杯になっちゃって。営業時間は何時までとか、駐車場はあるか、最寄り駅はどこか、そんなもん、自分で調べてくれと思うけど、邪険には出来ないじゃない、客だから」(中華料理店を営む男性)
電話を撤去したことで、当然、常連客たちからの注文もとりづらくなったと嘆く。
「常連さんだけに電話番号を教えようと思ったけど、それもフェアじゃないでしょ。だから、もう思い切って電話は非公表にした。俺だってこんなことやりたくないよ。でもしょうがない。古いお客さんも新しいお客さんも大事だけど、古いお客さんを追い出すわけにはいかないから。なんかいい方法があればと思うけど。わざわざ店に来てもらって出前の注文してもらうのも忍びないよ」(中華料理店を営む男性)