(C)NHK連続テレビ小説「あんぱん」NHK総合 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
ヤムおんちゃんは妖精!?
浅田:それに、このドラマのヒロインの描き方ってすごいと思うのよ。ドラマでは通常、反戦の人を描くことが多いじゃない? 特に朝ドラの主役は反戦の人が多いけど、あの時代は、のぶが「愛国の鑑」みたいになっちゃったように、いつの間にか洗脳されて軍国主義に染まってしまった人のほうが多かったし、そうなるのが自然だったはず。
原:私もヒロインを当時主流だった軍国主義の人として描いているのが、勇気のいることだと思いました。「お国のために」と言いつつ、葛藤があって、もちろん大切な人を死なせたくないという気持ちもあって。
浅田:辛かったのは、豪ちゃん(細田佳央太)が戦死した時。恋仲だった蘭子の辛さもわかるし、「お国のため」「立派」と子供たちに教えてきたのぶとの衝突も、辛かった。
原:展開を知っているはずなのに、豪ちゃんの死は、放送を観て朝から目が腫れるくらい泣きました。豪ちゃんと蘭子姉ちゃんは、家族がわちゃわちゃしているなかでも、二人だけ通じ合っている感じを撮影中ずっと感じていたので、余計に心揺さぶられて悲しかった。
浅田:二人が汽車に乗るシーンも良かったけど、寡黙な豪ちゃんと自分の気持ちを抑える蘭子と、言葉を交わすわけじゃない恋愛も素敵だった。だけど、私はその前に、羽多子さんが蘭子に「帰ってこなくていい」と着替えを渡したシーンで泣いちゃったわよ。大変なシーンばっかりだけど、そういう時でも撮影現場は変わらず明るくて(笑)。
原:浅田さんがいつも現場を明るくしてくださるから。本当にムードメーカーだと思います。
浅田:面白いのはヤムおんちゃんを演じている阿部(サダヲ)さん。みんな歳を取って、白髪も増えるし、シワも増えたりするのに、阿部さんだけ全然変わんないの。そしたら、阿部さんは「妖精的な存在なんだよ」って。
原:えっ! ヤムおんちゃんは現実の存在じゃないってことですか!?
浅田:おかしいでしょ(笑)。それに吉田さんには最初、顔からして怖いイメージがあったから、とっつきにくいのかなと思ったのよ。ところが、すごく楽しい人だから、私は「ダーリン」とか呼んで、吉田さんも「ハニー」とか言うのよ(笑)。
原:ラブラブですよね! お二人のやりとりが面白くて、漫才みたいだから、私たちはそれを見て笑ってる時間が多いんです。
(後編につづく)
【プロフィール】
浅田美代子(あさだ・みよこ)/1956年、東京都生まれ。1973年にデビュー。連続テレビ小説出演歴は『さくら』(2002年)、『花子とアン』(2014年)、今回の『あんぱん』で3度目。ヒロイン、朝田のぶ(今田美桜)の祖母役で夫の釜次(吉田鋼太郎)とともに「朝田石材店」を支えてきたくらを演じる。
原菜乃華(はら・なのか)/2003年、東京都生まれ。2009年にデビュー。話題の映画やドラマの子役として活動。映画『すずめの戸締まり』では1700人の中から主演に抜擢。2023年、NHK大河ドラマ『どうする家康』に出演後、連続テレビ小説『あんぱん』朝田家の三女、メイコ役に抜擢。
【聞き手】
田幸和歌子(たこう・わかこ)/1973年、長野県生まれ。ライター。様々な媒体でドラマに関する記事を執筆中。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。
※週刊ポスト2025年7月11日号