驚異的な速さで進化する最新兵器の数々(バンカーバスター。写真=AP/AFLO)
世界に混乱をもたらすイスラエルとイランの紛争に米国が介入、秘密裏にイランの核施設への軍事作戦が実行され、短期間での「停戦合意」に至ったように見えた。しかし、トランプ大統領による停戦発表後もイスラエルが攻撃をするなど、中東情勢は今なお緊迫した状況だ。次なる有事に向けて秘かに進められる「トランプ軍事作戦」──それを可能とするのは、驚異的な速さで進化する最新兵器の数々だった。【全3回の第2回。第1回から読む】
レーザーでドローンを溶かすシステム
米軍の空爆への報復としてカタールにある中東最大のアル・ウデイド米空軍基地をミサイルで攻撃したイラン。防空システムで迎撃に成功したものの、軍事ジャーナリストの井上和彦氏はイランの持つ軍事技術で侮れないのがドローン兵器(無人機)だと指摘する。
「イランはドローン生産大国でロシアに大量に輸出し、ウクライナ侵攻でも使われていることが知られています。イランのシャヘド航空産業が製造しているシャヘド136というドローンは、航空機タイプのプロペラ駆動の無人機です。なので人間が操縦する戦闘機ではできない軌道で飛ぶことができるうえ、小型で低速、低高度なのでレーダーによる検知が難しいというステルス性も持つ。これまでの軍事の常識が通用しない“ゲームチェンジャー”とも言われています」
核開発という脅威を叩いてなお、警戒すべき小型最新兵器があるということだ。それゆえ米軍やイスラエルはドローン対策を進めている。
「対策の一つにレーザー兵器でドローンを破壊する取り組みがあります。米国のブルーハロという会社は、米軍の協力も得てパレタイズド高エネルギーレーザー(P-HEL)システムを開発。低出力の20キロワットのレーザービームでドローンの急所を数秒で溶かし、空から落とすように設計されている。操作はXboxのゲームコントローラーを使うという。こうしたドローン迎撃兵器が今回も準備されていると思います」(井上氏)
米国では早くからレーザー兵器の研究が進められてきた。2010年代には、米軍事メーカーのレイセオン(現RTXコーポレーション)が国際航空ショーなどで3キロ先の無人航空機を3キロワットの高エネルギーレーザー兵器で破壊するデモンストレーションを行ない、2018年にはオフロードバギーに搭載された小型レーザーで、ドローンに照準を合わせて迎撃できるレーザー兵器システムを公表した。
「高エネルギーレーザー(HEL)と赤外線センサーやマルチスペクトルターゲティングシステム(複数の異なる波長帯のレーザーを同時に捉えて画像化する技術)などを一つのパッケージとしたものでした。
軍事の世界ではレーザー兵器だけでなく、電波兵器、粒子ビーム兵器といったアイデアもあります。目標物を破壊したり、無力化させたりする兵器を総称して『指向性エネルギー兵器』と言います。電波兵器は、いわゆる電子レンジの原理で、500メートル先の人間の体感温度を上げるといった実験がなされており、実用化を目指しています。ただドローンのほうが兵器としての完成度、実用性が高まっているのに対して、それへの対抗策は現在進行形と言っていいでしょう」(同前)
(第3回に続く。第1回から読む)
※週刊ポスト2025年7月11日号