国内

【埼玉マンホール転落事故】「どこに怒りを…」遺族の涙 八潮陥没事故を受けて国が自治体に緊急調査を要請、その点検作業中に発生 防護マスク・安全帯は使用せず

現場となったマンホール

現場となったマンホール

 のどかな田園風景が広がる埼玉県行田市の一角。2つのマンホールの周囲は警察による規制線に囲われ、近くのフェンス際には亡くなった4人を悼むための花束が手向けられていた。事故が起きたのは8月2日の午前9時過ぎ。下水道管の内部を調査するため、水抜きの作業が行われようとしていた。 

「マンホール内にいた作業員の1人が転落したような水音が響き、救助のためマンホールに入った3人も転落し、亡くなったのです。解剖の結果、2人は硫化水素のガスを吸ったことによる中毒死。残りの2人は中毒が原因で嘔吐した吐瀉物がのどに詰まったことによる窒息死でした」(全国紙社会部記者) 

 下水に含まれる汚物などの硫黄を含む物質が、細菌によって還元・分解される際に発生するのが硫化水素だ。 

「高濃度の硫化水素を吸い込むと、即座に命の危険につながります。事故発生直後、マンホール内は国の基準値の15倍もの濃度が検知されました。しかし4人は防護マスクや酸素ボンベなどを身につけておらず、転落防止用の安全帯も使用していなかったようです」(前出・全国紙社会部記者) 

手向けられた花

手向けられた花

 4人は同じ土木工事会社に勤めており、全員が50代中盤で同世代。普段から同じ現場で作業することも多かったという。下水道管の点検は、今年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、国が自治体に要請した全国調査によるものだった。 

「調査対象となった下水道管の総延長は全国で約5000kmにのぼり、緊急性が高い場所ではこの夏までに優先的に調査し、結果報告することを国は求めていました。各地で下水道管の調査が急ピッチで行われていましたが、人員や機械、予算が不足しているのが実情です」(前出・全国紙社会部記者) 

 警察は、安全管理が充分だったかなど、業務上過失致死容疑も視野に確認を進めるという。 

「先に落ちた仲間を助けに行かなければ3人は死ななかったわけですが、彼らの関係性を考えると、その選択はなかった。今後、捜査が進むにつれて安全管理の問題点などが出てくるかもしれませんが、いまは遺族も“どこに怒りをぶつければいいのか”と憔悴しきった状態です。同じような事故が起きないことを心から祈るばかりです」(遺族の知人) 

 一刻も早い原因究明と対策が待たれる。 

女性セブン202582128日号 

関連記事

トピックス

オーナーが出入りしていた店に貼られていた紙
「高級外車に乗り込んで…」岐阜・池田温泉旅館から“夜逃げ”したオーナーが直撃取材に見せた「怒りの表情」 委託していた町の職員も「現在もまだ旅館に入れない」と嘆き
NEWSポストセブン
記者の顔以外の一面を明かしてくれた川中さん
「夢はジャーナリストか政治家」政治スクープをすっぱ抜いた中学生記者・川中だいじさん(14)が出馬した生徒会長選挙で戦った「ものすごいライバル候補」と「人心を掴んだパフォーマンス」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
サッカー界のレジェンド・釜本邦茂さんが「免許返納」密着取材で語っていた「家族に喜んでもらえることの嬉しさ」「周りの助けの大きさ」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
中学生記者・川中だいじさん(14)が明かした”特ダネ”の舞台裏とは──
「期末テストそっちのけ」中学生記者・川中だいじさん(14)が抜いた特ダネスクープの“思わぬ端緒”「斎藤知事ボランティアに“選挙慣れ”した女性が…」《突撃著書サイン時間稼ぎ作戦で玉木氏を直撃取材》
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト