27回参議院議員選挙の候補者のポスター(NurPhoto via AFP)
インターネット選挙が全面解禁された2013年から12年、立候補者だけでなく、一般有権者にとってもSNSで推し活のような選挙運動はすっかりなじみの光景となった。ところが、ライバル陣営を攻撃したいあまり、SNSでターゲットを定めて個人攻撃するだけでなく、リアルでも害をなそうとする人たちがいる。ライターの宮添優氏が、思い込みを助長させやすいSNSに促されるまま、ネット社会の治安だけでなく、リアルの治安も不安定にさせる人たちの出現で悩まされる人たちについてレポートする。
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かつての選挙といえば、出馬するのは中高年の男性たちばかり、政見放送も街頭演説も退屈でつまらなく、多くの若者が興味を示さなかった。だが、インターネットやSNSの出現により、政治家たちの普段の政治活動や選挙運動、そして有権者の意識は大きく、そして急速に変化した。若者など、以前なら政治に興味を示さなかった層が選挙に関心を持つようになり、先に行われた衆院選では久々に、過去最多の投票率を記録した。だが、物事には光と影がある。ある国政政党の職員がいう。
「数年前から、候補者同士による演説妨害などが相次いでいましたが、最近では、演説を大声やヤジで邪魔をする集団があちこちに出現して、候補者に実際に危害を加えようとする動きもあり、かなり警戒していました。さらに最近では支持者間で、SNSを舞台にしたトラブルが相次いでいます」(政党職員)
確かに近年の国政選挙や知事選挙など、比較的大きな選挙が行われる際、SNS上には候補者や政党、その支持者らを揶揄したり、誹謗中傷する言説が溢れかえる傾向にある。以前は候補者本人や、政党の強烈な支持者らによるものが多かったが、多数の市民が政治に興味を持つようになった結果(といえば皮肉にも聞こえるが)、現実世界でも想定すらしていなかったトラブルに巻き込まれる事案まで発生しているという。都内在住の小売販売店店主が打ち明ける。
「店の敷地にある駐車場で、ある政党の候補者を呼んで演説をやってもらったんですが、酷い目に遭いましたよ。私自身、どこか特定の政党を応援しているわけではなく、昔から、いろんな政党、政治家を呼んで、ここでやってもらってきた。ところが今年、初めて、嫌がらせの電話がきた。店のSNSにも、あんな奴を演説に呼んで売国奴だ、不買だなんだとメッセージが送られてきた。今までになかったことです」(小売販売店店主)