トラブルが増えている「無料商法」(写真/イメージマート)
東京都消費生活総合センターは7月31日、ネット動画などで見られる「医療ダイエット6カ月無料」とうたう広告について、条件付きである実態や、高額なコース契約へ誘導される事例があるとして注意を呼びかけた。
特に29歳以下からの相談が増えているという。
安さだけで判断せず確認を
・事例:20代女性が広告を見て来院し、「総額100万円超の長期コース契約で6カ月無料」と案内されるが、体型条件で対象外とされ別の高額コースを勧誘。「今決めれば半額」と急かされ医療ローン契約。
・広告の落とし穴:「〇カ月無料」などは小さい文字で条件があり、体型・治療内容制限や薬代別料金なども。契約条件や規約を事前に確認する重要性を指摘。
・即決回避:美容医療は緊急性が低く、その場での契約は避け、持ち帰って冷静に検討することが望ましい。
相談事例では、広告を見てクリニックを訪れた20代女性が、「総額100万円以上の長期コースを60回払いで契約した場合のみ6カ月無料」と説明されたという。さらに体型条件を理由に対象外とされ、別の脂肪溶解注射、脂肪冷却、処方薬を組み合わせた「3カ月90万円」のコースを勧められた。「今決めれば半額」と急かされ、十分な検討時間もなく医療ローン契約を結んだと紹介されている。この女性は、その後、支払いへの不安から解約を希望した。
東京都によると、「〇カ月無料」といった広告は、小さな文字で適用条件が示されている場合が多く、体型や治療内容が限定されていたり、薬代や追加施術が別料金となるケースもあるという。安さを強調する広告をうのみにせず、契約条件や規約を事前に確認するよう求めている。
その上で、急かされる問題点も指摘している。美容医療は病気やケガの治療と異なり緊急性が低く、その場での即決契約は避け、一度持ち帰って冷静に検討することが望ましいと説く。
支払余力の確認も重要だと説明する。高額な美容医療の施術費用をローンで支払う場合、回数が多くなるほど分割手数料の負担は大きく、契約前に支払回数や手数料額、総支払額を必ず確認するよう注意を促す。
契約期間が1カ月を超え、かつ金額が5万円を超える美容医療契約は、特定商取引法上の「特定継続的役務提供」に該当し、契約書面を受け取ってから8日以内であればクーリング・オフが可能となると解説。8日を過ぎても中途解約は認められると説明する。
東京都は、医療ダイエットの問題を示す中で、美容医療の契約に関する相談が都内で増加傾向にあるとあらためて注意を促している。特に割合が高いのが29歳以下だと説明する。
東京都消費生活総合センターは、不安や疑問を抱いた場合には、消費者ホットライン「188」や最寄りの消費生活センターへ速やかに相談するよう呼びかけている。
「無料商法」トラブルが増える
・無料商法の横行:「無料カウンセリング」などで誘引し、来店後に高額契約を迫る事例が多発。
・悪質事例:長時間帰宅を許さず契約させ、契約と異なる金額を請求。被害総額が数百万円規模になることも。
・構造的問題:施術方針を無資格カウンセラーが決定、販売ノルマによる強引な勧誘や解約困難な契約が発生。
2月にヒフコNEWSでは美容領域での「無料商法」について伝えている。
東京都の統計によれば、2024年度上半期における29歳以下の消費トラブルは8037件と高水準を維持し、その中でも美容医療やエステに関する相談が目立っている。エステは370件、美容医療は331件で、件数は前年より減少傾向にあるものの、女性の美容医療トラブルは前年と同程度にとどまっている。
特に問題視されるのは「無料商法」だとされた。「無料カウンセリング」などと誘い、来店後に高額契約を迫る手法が多発しているというもの。
中には、複数時間にわたり帰宅を許さず、高額契約を結ばせた上、契約内容と異なる金額を請求する事例も報告されている。女性のみならず男性も被害に遭っており、支払い総額が数百万円に及ぶケースも少なくない。
また、施術方針を本来の医師ではなく無資格のカウンセラーが決定する事例や、カウンセラーに販売ノルマが課されることで強引な勧誘や解約困難な契約につながる構造的問題も指摘されている。厚生労働省の「美容医療の適切な実施に関する検討会」では、即日契約を避けるべきとの方針や業界ガイドライン策定が議論されている。
流行や価格の魅力に流されず、契約内容と支払い条件を十分に吟味することが欠かせない。
参考文献
「医療ダイエット6か月無料」の広告は本当?~美容医療契約は高額になりがちです。慎重に検討を!~
美容医療とエステ、「無料商法」トラブル目立つ、高額契約や解約問題、無料カウンセリングがきっかけに、東京都消費生活センターが統計を公表
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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