『サ道』作者・タナカカツキ氏が語る「日本のサウナ60年」と「ブームの変遷」とは
2000年代半ばから続くサウナブームも、一時期に比べると落ち着いてきたように見える。実際に、一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所の実態調査によると、2024年のサウナ愛好家人口は前年の1779万人から1648万人に減少している。
しかし今、サウナは新しい局面を迎えている。楽しみ方が多様化し、最近ではサウナ室内で受けられるプログラムやサービスが人気だ。タオルで蒸気をあおぐ「アウフグース」にショーの要素を持たせた「ショーアウフグース」、植物を束ねた「ウィスク」やスクラブなどで心身を癒す「ウィスキング」など、中には一度のプログラムで数万円、数時間かけて行うものもある。
観光や地域創生といった視点でも注目されており、2023年には自民、立民、維新など各党の議員が名を連ねる超党派の議員連盟「サウナ振興議員連盟」が発足。公衆浴場法の見直しなど、制度面からの支援も始まっている。他にも、企業間交流やメンタルケアなど、社会のさまざまな課題とも結びつく今のサウナ文化は、もはや一過性のブームとは言い難い。
そんな昨今のサウナブームを盛り上げてきたのが、「ととのった〜!」で知られる『マンガ サ道』の作者・タナカカツキ氏だ。同氏は、公益社団法人日本サウナ・スパ協会が認定する日本唯一の「サウナ大使」だ。社会現象とも言える現代のサウナブームを大使はどう見ているのだろうか。【前後編の前編】
大使と振り返る、日本のサウナ60年
1964年の東京オリンピック。フィンランドの選手団が持ち込んだことをきっかけに、サウナが日本に広がった──。
「私が生まれたのがちょうど、“第1次サウナブーム”の頃。高度経済成長期の真っ只中ですよね。当時のサウナは超ぜいたく品で、富裕層や企業の社長さんなんかがよく使っていたみたいです。
その後、1970年代後半にはオイルショックとともに最初のブームは終わりを迎えます。次にブームが生まれたのが、1990年代。健康ランドとかスーパー銭湯とか、どちらかというと家族向けのレジャーとして到来するんです。
私が『バカドリル』を出版して、忙しくしていたのが1990年代半ば。当時、サウナに興味どころか、嫌悪感すらありました。おじさんがぎゅうぎゅうに詰め込まれて汗を流している光景がすぐに浮かんだんです。
今ほど管理状況がよくないから、サウナ室内がカラカラで臭かったんですよね。水風呂もあったけれど、入らない人も多く、まだ、サウナはただひたすらアツさを我慢して、その後ビールを飲む施設という印象でしたね」