ロウリュができて蒸気で温まるサウナ
『サ道』やサウナ施設が取り組んだサウナのリブランディング
『サ道』でタナカ氏が強く意識したのは、「おじさんのもの」「アツい、我慢するもの」といった当時のサウナのイメージをリブランディングしていくことだった。
「サウナへの誤解、よくないイメージを払拭していかなきゃいけないと思ったんですね。サウナの良さは、アツいのを我慢することではなく、サウナと水風呂、休憩を繰り返した後に訪れる恍惚感にある。そんなリブランディングの仕掛けを『サ道』のあちこちに忍ばせました。
例えばエッセイ版『サ道』の表紙は、サウナ室のアツさをイメージする赤色などの暖色ではなく、青と白を基調に、水風呂のイラストを使用しています。サウナの本場、フィンランドの国旗と同じです。青と白ってなんだか、おだやか、爽やか、瞑想やリラクゼーションをイメージするでしょ。もっと洗練された、心地よいものだということを広めていきたかったんです」
『マンガ サ道』では、トランスやトリップをイメージするようなサイケデリックな背景とともに、キャラクターが「ととのった〜!」と叫ぶ演出が登場する。
「エッセイ版の『サ道』では、まだ『ととのう』という表現はなくて、『サウナトランス』『トリップ』といった言葉で表現していました。
『ととのう』という言葉は、人気のサウナブロガー《濡れ頭巾ちゃん》が使っていたんです。エッセイ版『サ道』をきっかけに彼と交流を持つようになって『ととのう』って良いな、と。それから、私も使うようになって、『マンガ サ道』のあのシーンが生まれました。
私自身、第3次と言われる直近のサウナブームの火付け役、立役者だと言われることも多いですが、その認識はありません。『ととのう』を共通言語として広めることができたのは確かに『サ道』の功績だったかもしれませんが、サウナブームという大きな川に合流した、小さな支流のひとつにすぎないんですよ」
昨今のサウナブームの盛り上がりは、施設側の努力があってこそのものだという。
「最近ではオーナーさんの世代交代や意識の変化もあって、サウナ施設が変わってきたように思います。横浜の『スカイスパYOKOHAMA』などがいち早くフィンランド式のサウナの入り方の魅力に気づいて、お客さんに文句を言われながらもサウナ室の温度を下げたんです。
もうアツいサウナに我慢して入る時代じゃない。ロウリュができて蒸気で温まるサウナにして、水風呂のセッティングを改良、休憩スペースを設置、いい匂いで清潔な館内に入ったらすぐに花なんか飾ってあって……我慢する場所、おじさんの場所ってイメージから、気持ちいい、リラックスできる場所に変わってきているんじゃないでしょうか」