広陵高校「暴力事案」と「出場辞退」をめぐる経緯
「最もショックな言葉を投げかけられた」
保護者への返答にあたる報告書上では、学校側は前後の文脈を補足するのみで、中井監督の発言についての事実関係を否定していない。被害生徒を咎めるような中井監督の発言は問題ではないのか。
広陵に質問状を送付するとまず、このやり取りの時点で高野連に暴力事案を報告済みであると説明。その上でやり取りについて中井部長がその場に同席したコーチに確認したところ、前述のやり取りは「ありませんでした」とする。一方で、その場でA君に規則違反の自覚を求める発言などがあったことから、保護者の主張を否定せずに返信したと説明した。
言い分は食い違っているが、そもそも中井監督の発言は「なかった」としながら、保護者への回答では「否定せずに返信した」という事実認定を避ける姿勢は、問題に真摯に向き合っているとは言えないのではないか。
高校野球の取材をしていれば感じることだが、部員同士のトラブルは少なからず起きるものだ。問題が起きた時こそ、指導者の力量が問われる。被害者側に「もみ消しではないか」「実力あるメンバーの厚遇ではないか」と疑念を抱かれる対応は言語道断だ。A君の父親が続ける。
「(帰寮時の)1月27日には中井監督に呼び出され息子にとっては最もショックな言葉を投げかけられました。『(加害者の一部の名前をあげ)こいつらは優等生、お前は優等生じゃない』と言われたと聞いています。その言葉に耐えられず、息子は自主退学を決めました」
広陵はこの発言について「事実であるとは把握しておりません」と回答。今回の問題をきっかけに、中井監督率いる広陵をめぐっては様々な問題が噴出している。
出場辞退前の広陵が初戦を勝利した8月7日の試合後、日本高野連に同校の「別事案」の情報提供があったと発表され、広陵は第三者委員会の調査を実施中だとした。この別事案は、2023年に起きた中井監督や一部部員による暴言・暴行との情報がSNS上で拡散された。それだけではない。10年前にも部内の暴力問題のもみ消しが疑われる事案があったとの証言が得られた。
(後編に続く)
※週刊ポスト2025年8月29日・9月5日号