注目が集まるNetflix新作「ダウンタイム」(公式サイトより)
今年の初め頃だった気がするが、知り合いの法曹関係者から、ちょっと驚く話を聞いていた。
「地面師の次は美容医療」
地面師というのは、Netflixで社会現象になったドラマ。その続きに位置付けられる題材として美容医療が取り上げられるという意味だ。それが本当ならば、同じように社会現象になる可能性がある。
大きなムーブメントになるという感覚
「そんなこと話していいんですか」と聞いたが、いや良いよ、ということだった。
本当にそういうことだろうと受け止めたが、「地面師」は俳優の熱演や課題への深掘り、その制作への力の入れようなどから、日本全国に大きなインパクトを与え、2024年の新語・流行語大賞にノミネートされるほどだった。それだけに、美容医療が想像を超える注目を集める可能性があると察した。「これは大きなムーブメントになるな」と考えた。
そうした中で、8月11日にNetflixの方から「ダウンタイム」制作決定が発表された。
「全裸監督」ではアダルトビデオ業界、「地面師たち」では地面師詐欺と不動産業界と、知られざる世界の裏側にスポットライトを当ててきたNetflixが新たなテーマに選んだのは、美容整形業界。
こうあり、以前に聞いた通り、Netflixが大きな力を入れるのだろうと感じた。
豪華絢爛な美容整形の世界──。
その裏で渦巻く、美と金への欲望。美容整形の光と闇を、華やかに、苛烈に描き出す医療ドラマ。
主人公の沼田文に松岡茉優、対立する美容外科医・遠山凛を仲里依紗が演じるという。
その内容についてはまだ詳細は明らかにされていない。
天才的なオペ技術で「命を救う」ことを信条としながらも形成外科医から美容外科医へ転身することになった主人公とカリスマ美容外科医として「美しさを与えることで人を救う」の二人の対立と過熱する美容整形ブーム・美を追い求める人々の葛藤や生きづらさを通してエンターテイメント作品として描き出す。
このように紹介されている。美容医療の表と裏をどのように表現されるかが注目される。
美容医療の表と裏というと、美容医療を受ける一般の人たちのトラブル、美容医療を提供する医師の業界内の問題などがあるが、ドラマではどちらについても触れられるのだろう。
プロデューサー三宅はるえ氏のコメントに次のようにある。
本作は美容整形を一方的に称えるのではなく、変えられるものと変えられないものの狭間で揺れる心情を、医師と患者、双方の視点から描く内面の物語です。
一方で、監督のYuki Saito氏は次のようにコメントを寄せている。
松岡茉優さんと仲里依紗さんという真逆の魅力を持つ俳優が対立し、認め合う。二人の繊細なやり取りから生まれる僅かな心の揺れを見逃さずに収めることができれば、見てくれる人の心に響くと信じています。
制作開始の発表では、医師への視線について言及する言葉が複数認められる。そうした点から、医師をはじめ美容医療を提供する側の動きに重みがあるように推測する。Netflixが触れている「全裸監督」にしても「地面師」にしても、AV業界や不動産業界のユーザーよりも提供側の裏を描いた点とも共通していると考える。
日本の美容医療の内実にある重要な問題
内容については想像するしかないが、医師をはじめ美容医療を提供する側の問題という点から考えると、なぜ“2人の医師の対立”が描かれるのかが、このドラマの重要なポイントではないかと感じる。
2024年には厚生労働省「美容医療の適切な実施に関する検討会」報告書が公開され、美容医療の課題が数々指摘された。例えば、「直美問題」や「無資格施術」など、美容医療を提供する側の解決されない構造的な問題が取り沙汰されている。ドラマとして掘り下げる部分は多く存在すると考える。そうした中でも、今回発表されたドラマのさわりにおいて、「形成外科医から美容外科医」に転身した主人公と、「カリスマ美容外科医」のライバルの対立が注目されているのは、日本の美容医療の内実にある重要な問題にも通じるように考える。この立場の違う2人を中心にした構図は全体像を予測する上では意味があると想像する。また、制作発表では、美容整形という言葉を使っていることから、基本的に中心は美容外科業界なのだろう。
2026年に向けて、美容医療の業界ガイドラインがまとまる方向になっており、業界自体が大きな動きを見せることが確実視されている。一般の人たちが、「ダウンタイム」という作品を大きな話題にするとしたならば、それは美容医療業界にとっても大きなうねりを生む可能性があるのではとも思う。
予告で示された通り、このドラマを通じて美容医療の光と影に社会の視線が集まる可能性は高そうだ。
参考文献
Netflixシリーズ 「ダウンタイム」 制作決定!主演;松岡茉優/共演;仲里依紗
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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