2025年の世界大学ランキングでは第15位にランクインしている南洋理工大学(ホームページより)
シンガポールの南洋理工大学(NTU)の科学者チームが、わずか68秒でゴキブリにサイボーグ手術を施す技術を開発した。極小カメラやセンサーを搭載したこの「サイボーグゴキブリ」は、地震や放射能災害などの現場に投入され、被害状況の把握や人命救助に活用される可能性があるという。
この技術は、サイボーグ昆虫の研究を進める佐藤裕崇(さとう・ひろたか)教授が率いる研究チームによって開発された。ゴキブリの背中に小型コンピュータを搭載した電子基盤(バックパック)を装着し、リモート操作によって行動を制御する。
手術の工程は、ゴキブリを眠らせ、機械に固定。ロボットアームによって、2.3グラムの3Dプリント製バックパックを背中に装着し、電極を接続する。これらの作業はすべて自動化されており、完了までにかかる時間はわずか68秒だという。人間の手作業では約15分かかるため、効率性は非常に高い。
ゴキブリはその頑丈な体構造からサイボーグ化に適しているが、他の昆虫でも応用可能とされている。生体を利用することで、移動に電力をほとんど使わず、無線通信や撮影など電力消費の大きい機能にエネルギーを集中できる。
狭い空間や危険地域にも容易に侵入できるため、サイボーグゴキブリは人間が立ち入れない災害現場での探索に有効だという。負傷者の位置確認や放射能汚染の拡大防止など、二次災害のリスク軽減にも貢献が期待されている。
実際に3月28日に発生したミャンマー地震の被災地で初めて現場に投入され注目された。
研究チームは今後、サーマルカメラ、マイク、慣性測定ユニット(IMU)などをバックパックに統合し、より高度な「ゴキブリ救助チーム」の開発を目指しているという。
なお、佐藤氏は日本の大学や高校などでも講演活動を行うなど啓蒙活動にも積極的に取り組んでいる。
南洋理工大学(NTU)は、シンガポールを代表する研究機関であり、2025年の世界大学ランキングでは第15位にランクインしている。