退陣の記者会見に臨んだ石破茂首相(時事通信フォト)
「意見具申したら電話に出なくなって」
もともと、石破氏には切れるカードはほぼなかった。総裁選の前倒し論については“名前を名乗れ”と踏み絵を迫ったが、身内からも次から次へと前倒し要求書に署名したことを公開する動きが相次いだ。それに焦って解散をちらつかせると党内の猛反発を招き、ますます求心力を失うことになった。
大きな転機になったのは9月2日だったと語るのは、自民党中堅議員だ。
「両院議員総会で参院選の敗因を盛り込んだ『総括』を受け、森山裕幹事長が退任する考えを示した。そのあと、自民党所属議員に『総裁選挙実施の要求』という紙が配られた。ここから、Xで“サインした”と写真を公開する議員が出はじめた。
ちょうどその頃から、総理がそれまで以上に頑なになりはじめた。党幹部が、総理に『党の分断を避けるためには自ら身を引いていただくしかないと意見具申したら、そのあと電話に出なくなった』とぼやいていました。菅氏、小泉氏との3者会談でなんとか説得できたが、あれがなければ総理は突っ張って解散に走っていたことも考えられる」
石破政権は末期状態だったことは明白だが、解散総選挙となれば民意を示す機会となる。国民にとってはそのほうがよかったのかもしれないが……。