芸能

《没後40年》夏目雅子さんの最後の舞台で共演した西岡徳馬が語るその魅力と思い出「圧倒されたプロ意識と芝居への情熱」「生きていたら、日本を代表する大女優になっていた」

西岡徳馬(左)と共演した舞台『愚かな女』(西武劇場)

西岡徳馬(左)と共演した舞台『愚かな女』(西武劇場)

 1985年2月、病気のために舞台を降板すると発表した夏目雅子さんは、同年9月11日に亡くなった。それから40年、俳優の西岡徳馬が、最後の舞台での夏目さんの思い出を振り返った。

 * * *
 夏目雅子さんとの初対面は、彼女の最後の舞台となった『愚かな女』(1985年)の稽古場でした。「この芝居に懸けている」と、半年前から他の仕事を断わって、膨大なセリフを頭に入れたそうです。公演中、口内炎を患った彼女が「病院で焼いてきたの」と口の中を見せてくれたことがあります。そこには10円玉ほどの大きな焦げ跡。そんな状態で弱音一つ吐かない。プロ意識と芝居への情熱に圧倒されました。

 それでいて驚くほど天真爛漫。一度稽古を見学しただけの私の友人が後日、電車で偶然会った際、夏目さんが気さくに声をかけてくれたそうです。

 病で舞台を降板せざるを得なくなった時の無念は計り知れません。お母様が「あんなにやりたがっていたのだから、あのまま舞台に立たせてやればよかった」と涙ながらに仰っていたのが忘れられません。お母様によれば、入院した後も、彼女は一刻も早い復帰を期して、毎日台本を読んでいたそうです。

 もし彼女が今も生きていたら、間違いなく日本を代表する大女優になっていたでしょう。芝居へのひたむきな情熱と誰に対しても飾らない太陽のような人柄。それが夏目雅子という女優の真の凄さなのだと思います。

【プロフィール】
西岡徳馬(にしおか・とくま)/1946年生まれ、神奈川県出身。シリアスからコメディまで多彩な役を演じ、名バイプレイヤーとして確固たる地位を築いている。

●夏目雅子ひまわり基金
 1993年、夏目雅子の母・小達スエさんが代表となり設立。故人の遺志を引き継ぎ、抗がん剤等の副作用で脱毛に悩む人々へカツラの無償貸与を行なっており、活動を支える賛助会員を求めています。
一般財団法人 夏目雅子ひまわり基金 www.himawari-kikin.com/

取材・構成/小野雅彦

※週刊ポスト2025年9月19・26日号

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