夫が使っていた介護用ベッド。訪問看護師に聞きながら手配した
仕事は変わらず続けていた
最期まで夫に寄り添いながらも、倉田さん自身は変わらず仕事を続けていたという。
「夫ががんになってから、一つも仕事を減らしていないんですよ。亡くなる一週間前にも、遠方に講演会があったので出かけていました。
在宅医療でも在宅介護でも、自分のペースを守ることって、結構大事なポイントだと思います。ケアをしている家族は、自分が我慢してしまうことも多いと思うんですが、私はあまりそれには賛成できませんね。
もちろん本人の希望は優先したほうがいいんですが、自分を犠牲にしてまで尽くすのはあまりすすめられません。それが続いてしまうと、『夫のために仕事を1つ飛ばしちゃった』とか、『相手のせいで』という思いが生まれて、究極的には『この人がいなければ』という発想に近づいていく気がします。そんなの嫌ですよね」
入院中も仕事を続けていた叶井俊太郎さん
24時間つきっきりではない
在宅ケアが始まってからもお互い一人になる時間はあり、24時間つきっきりだったわけではない。
「近所のカフェで原稿を書くこともありました。心配なときには義理の妹に来てもらったりしながら、自由に外出していました。
元気なときだって、そうしていましたから。だって、いくら仲がいい夫婦だったとしてもずっと一緒にいたら息が詰まると思うんですよ。日々、小さなストレスは溜めないようにはやっていましたね。
少しずつ弱っていく夫を見ているのは悲しかったのですが、夫の面倒を見ることについては一切ストレスはなく、最期まで彼を大事に思っていました。本当に、いつまでも家にいてほしかったんです」
取材中、時折涙を浮かべながら語る倉田さんの新著には、「住み慣れた家で最期まで過ごす」ための具体的なヒントがたくさん散りばめられている。
「夫が選んだ在宅緩和ケアについて、もっとみなさんに知ってほしいですね。夫はがんで余命6か月と告げられても最期まで自分らしく生きた。夫が最期まで家にいてくれて、本当によかったと何度も思います」
◆倉田真由美
くらた・まゆみ/1971年福岡県生まれ。漫画家。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。最新著『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』が9月26日に刊行。9月30日には「本屋 B&B」にて発売記念イベントを開催予定。https://bookandbeer.com/event/20250930_hed
写真提供/倉田真由美さん 撮影/五十嵐美弥 ヘアメイク/大嶋祥枝 取材・文/桜田容子