A子さんは田中陣営の依頼で市長選の候補者として「名義貸し」をしただけで、選挙運動にはノータッチ、選挙費用も自分では把握していないことを認めた。
田中氏の後援会関係者の証言と一致する部分が多い。選挙費用の報告書で出納責任者として記載された人物は、市内にあるジャズバーで演奏する80代のピアニストで、選挙翌年に亡くなっていた。
疑惑は深まるばかりなのである。
政治資金を監視している上脇博之・神戸学院大学教授がこう指摘する。
「田中市長陣営が選挙の費用を全額出し、謝礼も出しているとすれば、『公職の候補者等の寄附の禁止』(公選法199条の2)に抵触する可能性があります。また、女性候補は立候補したが、何もしなかった、お金の処理も報告書にも携わらなかったとすれば、収支報告書が正確に報告されていないとして、公選法189条の『選挙運動に関する収入及び支出の報告書の提出』の規定に違反します。ただし3年以上前の選挙なので、時効にはなりますが」
後編記事《田中甲・市川市長、政治資金報告書の会計責任者に“勝手に元秘書の名義を使った”疑惑 元秘書は「全く知らない」、市長は「連絡を取っていますよ。私は」と証言に食い違い》では、この疑惑について田中市長を直撃、政治資金をめぐる別の疑惑についても報じている。
(後編につづく)
※週刊ポスト2025年10月10日号