小泉進次郎氏ならではの“切り札”があるという(時事通信フォト)
5人が立候補した自民党総裁選では、序盤から小泉進次郎・農相のリードが伝えられている。物価高対策などの課題が解決できる新しいリーダーとして支持を集めているのであればいいのだが、内実は違う。党内の有力者の意向のままに大臣ポストが配分される、古い自民党長老政治の再生産なのである。何が起きているのか、内幕を抉る。【全4回の第1回】
他陣営を崩す「大臣手形」という“切り札”
小泉進次郎・農相、高市早苗・前経済安保相、林芳正・官房長官、茂木敏充・前幹事長、小林鷹之・元経済安保相の5人の論戦が続くなか、
「1回目の投票で過半数を取り、一気に勝負を決める」
と大号令をかけたのが、優勢と見られている小泉氏の陣営だ。
自民党総裁選は国会議員票(295票)と約92万人の党員・党友票(295票に換算してドント方式で各候補に配分)の合計で決まる。
新聞各紙の世論調査では高市氏の支持が多いが、自民党支持層に限ると逆転し、小泉氏の支持率は2位の高市氏を大きく引き離している。
「党員票は実数で4割取れば過半数に近い配分になる。決選投票に持ち込まずに1回目の投票で勝つには国会議員票を過半数より上積みする必要がある」(小泉陣営の議員)
小泉選対では菅義偉・元首相が顧問、加藤勝信・財務相が本部長に就任し、60人以上の議員が何かの役職について党員票集めやライバル陣営切り崩しを進めている。
効果的なのが入閣を約束する「大臣手形」だ。
ポストの約束は優勢な候補でなければ効果が薄い。小泉氏ならではの“切り札”と言える。
「総裁選の告示前から入閣情報が乱れ飛び、小泉陣営は他候補の陣営の切り崩しに動いていた。派閥全盛期の総裁選と変わらない」(中間派議員)