懲役5年が言い渡されたハッシー
「ハッシー」の愛称で親しまれた元将棋プロ棋士の橋本崇載被告が2023年7月、元妻であるAさん、その父親であるBさんの2名に対する殺人未遂と住居侵入の疑いで起訴された事件。9月22日より大津地裁にて裁判員裁判の公判が行われ、10月2日に懲役5年(求刑・懲役10年)の判決が言い渡された。
弁護人は、橋本被告が事件当時の精神状態から心神喪失または心神耗弱状態であったと主張していたが、裁判官は完全責任能力を認めた。また「被害者に落度は認められず酌量の余地なし」と強くその犯行を非難した。
9月24日の公判では、事件の被害者とされているAさん、Bさんに対する証人尋問が行われていた。両名によって語られた内容は、事件そのものの恐ろしさに留まらず、突如引退を表明した「ハッシー」の当時を知る一因となるものであった。裁判ライターの普通氏がレポートする。【前後編の前編】
長男出産後に別居
証人Aさん、Bさんへの尋問はビデオリンク方式で行われた。ビデオリンク方式とは、法廷での証言に大きな精神的負担がかからないよう、別室にてモニター越しで証言を行う方法だ。性犯罪事案や、傷害系の事案において採用されることがある。
Aさんは声を震わせることもあったが、終始はっきりとした口調で証言を行った。
検察官からの質問に答える形で事件までの経緯を話していく。Aさんは平成29年に橋本被告と結婚し、平成31年に長男を出産する。しかしその数か月後にその長男を連れて、実家へ帰る。その理由について、こう証言する。
Aさん「結婚生活で被告人からのモラハラに苦しみ……長男が生まれたあとも被告人が自殺未遂をしたり、刃物を持ったりして身の危険を感じたことも。あとは被告人からも『出ていけ』と言われたこともありました」
具体的には、橋本被告がイライラすると物にあたる、長時間Aさんを責める、スリッパで叩く……などがあったと証言する。