事件直前にAさんに対する名誉毀損で裁判が行われていた
その後、Aさんによると、橋本被告とBさんとで膝立ちのような姿勢でクワのつかみ合いになった。Aさんも加勢し、後ろから橋本被告を羽交い絞めにし、手元にあった木の箱で何度か殴ったりもした。抵抗しないと、2人とも殺されると思ったと当時の心境を語る。
その後、Bさんが頭突きをして、橋本被告が少しひるんだ形になった。Bさんは落ち着いた口調で「こんなことしてもアカンやん」と諭すように言ったというが、橋本被告は何度も「殺してやる」と言ったという。
抵抗が弱まり、押し倒したことでクワを取り上げると、橋本被告はうつ伏せになり、Bさんが馬乗り状態になった。凶器の刃先でない部分で足を数発殴り、その後頭部を2発殴打して、抵抗がさらに弱まったことを感じた。
Bさんは、さらにもう1発殴打しようとしたが、Aさんは過剰防衛になると感じ止めたという。動かなくなった橋本被告はBさんに任せ、子を車に乗せて外で通報をした。
Aさんのケガは幸いにも手足の指などへの切り傷で留まった。しかし、精神的な苦痛は今も強く残っているという。男性を恐ろしく感じるようになり、時々自身が殺される夢を見ることもあり、家にいても落ちつけないことがあるという。
最後に橋本被告への処罰感情を聞かれたが、答えなかった。別室で証言を行っているものの、法廷で橋本被告に聞かれている環境に恐怖を感じるためだという。
検察官からの質問に、当時を思い出すように詳細に答えたAさん。続いて弁護人からの質問に移る。
弁護人は当然、橋本被告にとって有利となるよう情報を引き出していく。そこで、橋本被告が主張するAさんとBさんとの“溝”が明らかにされた。
(後編につづく)
◆取材・文/普通(裁判ライター)