35mmフィルムを高精細化することによって、ヒトラーが左手に持っているものが老眼鏡だと判明した(C)NHK
さらにカラー化にあたっては、色彩の参考となる文献や専門家への取材をもとに色を決定し、人の手で色付けを行なった。背景などではAIも活用したという。
担当プロデューサーの寺園慎一氏が話す。
「視聴者からは、白黒だと遠い歴史と感じるが、カラーだと今の自分と地続きの世界に感じるという声が届いています」
プロパガンダ映像に映る“国民の本音”
高精細カラー化によって見えてきたのが「プロパガンダ映像の綻び」だ。
1939年9月、ドイツのポーランド侵攻で第二次世界大戦が始まると、ドイツのニュースは「ポーランドのドイツ系住民が恐怖に晒されている」と市民に語らせ、侵攻を正当化しようとした。しかしその後ろには、少年が笑う様子が映っていた。
1940年9月、ドイツによるロンドンなどへの無差別爆撃に際し、イギリスのニュースは「市民は日常生活を続けている」と不自然なほど強調し、慰問する国王夫妻を映して国民を安心させようとしたが、その後ろには怒りを滲ませた表情の市民がはっきりと映っている。これらの場面が第1部で放送された。