独ソ戦が始まり、1941年9月19日、ドイツ軍がウクライナの首都キーウを占領。撤退するソ連軍はドイツ軍の侵攻を遅らせるため建物に爆薬を仕掛け、遠隔操作で破壊した。写真はキーウの大通り・フレシチャーティク(C)NHK
AIを活用した人物の特定と読唇
こうしたこと以上に全体を通して印象的なのは、末端の兵士や一般市民の様子が鮮明に浮かび上がったことだ。
1944年6月のノルマンディー上陸作戦に参加するアメリカの若い兵士たち。イギリスに向かう船中では旅行気分で無邪気だが、作戦決行時には打って変わって緊張と恐怖の表情を見せる姿が映されている。ドイツ軍の空爆を受け、走って逃げるロンドン市民の姿もはっきりと見えるようになった。
「今の日本では戦争はイメージで捉えられがちですが、生身の肉体を持った人間が戦っていたし、爆弾の下には人間がいたことを感じさせてくれます。今後はAIを使った顔認証や読唇に取り組むことで、映像に映る人物を特定し、サイレントフィルムの中で首脳たちが喋っている内容を解読できないか試みたいと考えています」(寺園氏)
過去の映像には、まだまだ“我々が見ていない真実”が埋蔵されているのだ。