ジープはフロントの左側がにグシャグシャに(読者提供)
話題が盛り上がって得したのは広末側とTBSだけではない
こう言ったらたいへん失礼ですが、ここ数カ月のあいだに「広末涼子」という名前を脳裏に思い浮かべたことがある人は、けっして多くはないでしょう。女優は、その存在を多くの人に意識してもらってナンボです。ただ、バラエティ番組で安直にいじられることで名前が出ても、イメージ的にプラスにはなりません。
しかし、きちんと抗議したことで、事務所側が「広末涼子」というブランドを守ろうとしている姿勢は伝わりました(世間が彼女にブランド価値を感じるかどうかは、また別の話)。さらに、一連のTBSとのやり取りがニュースになったことで、番組を見ていなかった大多数の人々にも、あらためて「広末涼子」の存在を広く強く印象づけました。
TBS側も、抗議されたニュースが盛り上がったおかげで、今までこの番組を見たことがなかった大多数の人にも、こういう攻めた内容の番組があると知ってもらえました。私も今回の騒動で、この番組を初めて知ったひとりです。次に放送されるときは、見てみようかなと思わされました。そう思ったことを覚えていられる自信はありませんが。
ネットで騒いでくれている人たちのおかげで、話題になっている「165km」の設問だけでなく、この番組が過去にもスリリングな設問をたくさん出題していたこともわかりました。たとえば、Qが「総裁じゃないのは?」で、選択肢が【1】大山倍達(極真空手)【2】大川隆法(幸福の科学)【3】山田拓美(ラーメン二郎)【4】大川豊(大川興業)……とか。
「165km」も含めスリリングな設問を面白いと思うかどうかは人それぞれ。ただ、何かとやりづらい世の中において、テレビが大切にしてきた伝統であり本分とも言える「不謹慎で無責任なおふざけ」は、まだ健在だったようです。今回、素直に謝って穏便に手打ちになったことで、製作サイドへの影響も最小限に抑えられました。「こんなことで委縮しなくていいからね」という暗黙のメッセージを読み取るのは、無理があるでしょうか。
ネット上で「ケシカラン!」「不謹慎だ!」「だからテレビは!」と目を吊り上げて非難している人たちも、強気に攻撃できる絶好のネタが現れてよかったですね。広末涼子に何の興味もなくても、番組を一度も見たことがなくても、それは関係ありません。みなさんにとって大切なのは「攻撃するためのもっともらしい理由」ですよね。
あっさり手打ちになったのは物足りないかもしれませんけど、どっちみち持ち前の不毛な情熱や正義感を発揮して、2、3日もすれば別の標的を見つけることでしょう。そのときにはこの話題はすっかり忘れているかと思うので、とくに問題はなさそうです。いつもお疲れさまです。
あの市長も「さっさと謝る」ということができていたら……
今回の件は、どこまで狙ってのことかはわかりませんが、広末涼子側もTBSも損少なく益多い展開になりました。ついでに言えば、ネットで騒ぎたいだけの人たちも、いいネタを鼻先にぶらさげてもらって、つかの間の楽しさを得たことと存じます。いわゆる「三方よし」ですね。
怒られたらさっさと謝り、謝られたら寛大に許すことの大切も、十分に見せつけてもらいました。どちらも、頭ではそうしたほうがいいとわかってはいても、半端なプライドが邪魔をしたりして、なかなかできません。あの議員やあの市長も「さっさと謝る」ということができていたら、こんな展開にはならなかったのに……と思わされます。
「謝られたら感謝を示す」という大人なメソッドは、ぜひ積極的に実践しましょう。取引先とのやり取りで、先方のミスを謝られたときに感謝を示せば、遺恨が残らないだけでなく、ちょっと貸しを作った気になれます。ただ、感謝された側が「あっ、もう怒ってないんだな。よかったよかった」と油断してしまうのは、あまりにも迂闊ですけど。