将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士・青野照市九段
将棋界で「中年の星」と呼ばれた棋士がいる。青野照市九段だ。A級在籍11期、公式戦通算800勝を達成し、2024年6月、50年の現役生活に幕を下ろした。その青野九段が棋士人生を振り返って書き下ろしたのが、新書『職業としての将棋棋士』である。【前後編の前編】
「よくこんなムチャクチャな世界に、50年以上もいられたな」
そう述懐する青野九段だが、将棋を仕事にするとはどういうことか──。半世紀にわたって真剣勝負の世界に身を置いてきた青野九段に、本書に込めた思いと、将棋棋士という職業の魅力について聞いた。
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──今回、なぜ棋士という「職業」をテーマに書こうと思われたのですか。
去年(2024年)6月に現役生活を終えたわけですが、どこかで集大成としてまとめてみたいと思っていました。将棋人生を振り返りながら、棋士の知られざる世界を全部書いてしまおうと。中には書かれて困る人もいるかもしれませんけど(笑)。
──奨励会(プロの養成機関)時代から50年以上将棋界を見てきて、「よくこんなムチャクチャな世界に、50年以上もいられたな」と書かれていますね。
本でもいろいろなエピソードを書いていますが、とにかく奇人、変人の棋士が多かったですからね。もちろん天才も奇才も。私自身はどちらかというと平均的な感じの才能できた分、酒も博打もやり、将棋の才もある破天荒タイプの棋士にはやはり不思議な魅力を感じますね。
