各地でクマによる被害が相次いでいる
熊の出没事件・襲撃事件が多発し、日本を恐怖に陥れている。環境省によると、2025年度の熊による犠牲者は過去最多となる10人(10月27日時点)。被害が続いている秋田県では、鈴木健太知事がついに自衛隊の派遣を要請し、小泉進次郎防衛相は10月28日、「速やかに検討し、できることから進めていきたい」と述べた。
いま問題になっているのは、人間の生活圏に出没する“アーバン熊”。彼らは市街地に迷い込んでいるのではなく、「ここにはエサが豊富にある」と知っている“確信犯”なのだという。
2024年1月に発行された別冊宝島編集部編『アーバン熊の脅威』にも、「最も効果的な解決策は、自衛隊の投入」と書かれている。熊の「狡猾さ」や「獰猛さ」はもはや民間では太刀打ちできないレベルになっているというのだ。
本書を一部抜粋・再構成して紹介する。【前後編の後編。前編から読む】
親熊から子熊へ受け継がれる“悪知恵”
たとえば熊が盛んに出没すればゴルフ場は倒産しかねないだろう。新たに造成した住宅地にせよ、ここを狙い撃ちして熊が出没を繰り返せば、住宅を買う人はいなくなる。こうしてジワジワと人間の活動域の周辺部を奪えば、その成功体験は次世代へと受け継がれていく。
熊は3年かけて子育てし、その間、母熊が得てきた知恵と成功体験を小熊へと叩き込む。人間の活動域をどうすれば奪えるのか、という情報は世代を超えるたびにブラッシュアップされ、バージョンアップしていくのだ。
アーバン熊は、2004年(2300頭)、2006年(4600頭)、2010年(2000頭)という世界でも例をみない大量駆除を乗り越えた世代から生まれたと考えられる。この大量捕殺の生き残り世代は、ハンターとそれ以外の人間を区別できるようなったのだろう。それで人間を恐れなくなった。それだけでなく狩猟区と禁猟区、さらに禁猟期間も理解しているといわれている。ハンターがやってくれば、どこに逃げればいいのかを知っているのだ。
そんな悪知恵を覚えた世代(新世代クマ)の母熊から学んだ「アーバン熊」が人間を恐れることはない。当然、人間の農作物と家畜を奪おうと人間の活動域へと進出する。そして2024年現在、第2世代となる「アーバン熊2.0」が、どうすれば安全に人間の生活圏で活動できるのか、その方法を試みるようになってきた。
