高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
11月7日、高市早苗首相が台湾有事の“最悪ケース”について、「存立危機事態に該当し得る」と国会内で答弁したことに端を発する一連の問題。中国政府がこの発言に反発を見せるなか、8日には中国の薛剣(せつ・けん)駐大阪総領事がXで「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」とポストした(現在は削除済み)。
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない。中国事情に詳しいフリージャーナリストの西谷格氏が中国国内のリアルな反応をレポートする。
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悪化の原因の一つは、薛剣駐大阪総領事がSNSに投稿した「汚い首」発言。しかし、実はこの投稿は一般の中国人にはほとんど知られていない。
筆者が確認した限り、中国の主要なニュースサイトではまったく報じられておらず、記者会見のやり取りを記録している中国外交部のホームページでも、該当部分の質疑が抜け落ちている。
ネット検索すれば薛剣氏の発言も見つかることは見つかるが、ごく普通の中国人はそこまで調べないだろう。多くの中国人は「日本が一方的に武力攻撃を示唆してきた」と捉えている。
結果、ネット上では日本に対する罵詈雑言が広がっている。原爆投下について触れるコメントが目立つほか、日本への旅行を計画している現地の人々を、牽制するような投稿も多い。
《日本人は毎日のようにあなたたちを害虫呼ばわりして、『中国人のせいで日本がダメになった』『早く出て行け』と罵っている。それでよく平然と喜んで日本に旅行に行けるよな》
《何人か売国奴がいるね。日本に居たいなら、そのまま居ればいい。もう二度と戻って来るな。顔もブサイクで、頭も悪いんだから、その遺伝子を日本に残すのはむしろいいことだ》
かなり激しい投稿である。とはいえ、なかには現実的な心配をする人も。
《今は政治問題よりクマ出没のほうが恐い》
国営通信社「新華社」や、日本のNHKに相当する国営テレビ局「中国中央電視台(CCTV)」は、高市首相の名前を文字って「問題を起こす『毒苗』」などと報道。「『台湾は中国に帰属』と日本は前々から承認している」と主張した。
だが、台湾の帰属についての日本の立場は1972年の日中共同宣言にある通りで「台湾が中国に帰属することを承認」はしていない。
