安福容疑者の高校時代。同好会写真で一番端に映っていた
Aさんが明かした「安福への想い」
奈美子さんを殺害した安福容疑者はその後、逮捕されるまでの26年間、事件については家族や周囲には話さず、身を隠すように生きていたという。
Aさんの自宅を訪ね、安福容疑者との交流を聞くと、こう答えたのだった。
「(安福容疑者とは)幼馴染だったからよく知っているっていうか。私の結婚式には来てもらいました。年賀状のやり取りはしていましたけど」
いつぐらいまで続いていたのか。
「まあずっとやり取りはしていましたよ。途中(やり取りが)消えたりしたかもしれないですけど。電話やメールのやり取りはなかったです」
Aさんの歯切れは悪かったが、安福容疑者の犯行には驚きを隠せない様子だった。
「(事件については知らなかった?)当たり前です。私のほうがどうしてって知りたいぐらい。どうしてそんなことになったのって聞きたいぐらいですから」
Aさんはそう言ってインターフォンを切った。「どうして」というかつての親友の問い掛けは、鑑定留置中の安福容疑者に届くだろうか。
【プロフィール】
水谷竹秀(みずたに・たけひで)ノンフィクションライター。1975年生まれ。上智大学外国語学部卒。2011年、『日本を捨てた男たち』で第9回開高健ノンフィクション賞を受賞。他に『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)などの著書がある。10年超のフィリピン滞在歴を基に「アジアと日本人」について、また事件を含めた現代の世相に関しても幅広く取材を続け、ウクライナでの戦地ルポも執筆。
