秋葉原駅前出の演説後、福島へと応援演説に向かおうとする高市早苗首相(写真撮影:小川裕夫)
極めつけは、福岡11区だ。同区で自民党は元総務大臣の武田良太氏を擁立。中道・維新の候補者など5人が立つ乱戦となった。武田氏は長年にわたって連立関係にあった公明党に謝意を示しつつ、武田陣営は選挙戦で「小選挙区は武田、比例は中道」と呼びかけて一定の配慮を見せる。
高市首相は1月19日の記者会見で、衆院選を「自民・維新を選ぶか、それとも野党を選ぶかの政権選択」としたが、与党候補どうしが小選挙区で覇を争っている状況では、それが政権選択の選挙といえるのか? といった疑問も生じかねない。与党支持者にとっては混乱するばかりだろう。
高市自民党は高い支持率を背景に選挙戦を押し切り、自民党・維新の与党勝利を手中にするつもりだ。しかし、勝利という結果で満足するのは自民党だけだろう。むしろ、今回の自民党が大勝するという事前予測は維新との連立を維持するのか解消して自民単独でいくかといった問題の火種になる。
衆議院定数削減はどうなる
今回の選挙で自民党単独で衆議院は過半数の議席を有したとしても、参議院では過半数に満たない。そのため、引き続き他党との協力は不可欠になる。とはいえ、そのパートナーが維新である必要はない。国民民主党や参政党といった高市内閣に協力的な政党は他にもあるからだ。
高市内閣の発足に際して、維新は閣外協力の条件として衆議院の定数削減を求めた。これは自民党内でも反発が強く、解散で廃案になった。また、維新が旗印としてきた企業・団体献金の禁止は、閣外協力を結ぶ際に取り下げた。高市自民党は企業・団体献金の禁止を軽々に飲めない。つまり、維新の要求はことごとく受け入れてもらえなくなるのだ。
選挙初日の光景を踏まえると即座に閣外協力を解消することは考えづらいが、衆院選で大勝すれば維新の要求を断れる態勢は整う。維新が要求を突きつけても、自民党は強気に断れる。
選挙戦初日の秋葉原駅前で、維新の吉村洋文代表は「維新が自民党のアクセル役になって、高市内閣の政策を前に進める」と宣言。こうした言動から、永田町関係者は「維新は第2自民党」と揶揄する向きもある。そうした声に対して、吉村・藤田両氏は意に介さない。
長らく連立を組んでいた公明党は、自民党のブレーキ役であることを公言しながら政権運営を支えていた。維新は公明党とは真反対の立場から政権を支えようと、懸命に高市首相との距離の近さをアピールする。
ようやく与党という立場を得た維新にとって、連立相手を組み替えられて野党に転じることは避けたいという思惑があることは間違いない。そうした弱みもあって、高市自民党には強い要求ができなくなることは必至だ。
