国際情報

北朝鮮、少なくとも9発の核爆弾を保有か

 北朝鮮が、エネルギー利用のための核開発ではなく、兵器としての核開発であることが発覚したのは1989年。その後、2006年10月9日に、国際世論の反対を押し切って、初の地下核実験を予告通りに敢行したが、爆発威力は設計威力の8分の1で、いわば実験は失敗に終わった。さらに2009年5月25日、2回目の核実験を強行するもまたしても設計威力には達せずに、失敗した。

 この時点で2発の核爆弾をすでに爆発させている北朝鮮だが、現在いったい何発の核爆弾を保有しているのだろうか。ジャーナリストの惠谷治氏は以下のように説明する。

****************************
 濃縮ウランではなく、原子炉の使用済み核燃料棒から抽出したプルトニウムを核爆弾の原料としている北朝鮮は、第2回核実験直後の2009年6月、抽出されるプルトニウム全量を「兵器化」すると宣言し、11月に使用済み核燃料棒(第4次装荷分)を8月末までに再処理したと発表した。北朝鮮が抽出したプルトニウムは、少なく見積もっても計90kgという計算になる(最大値は105kg)。

 1発の核爆弾に必要なプルトニウムは最低4kgであるが、北朝鮮の核爆弾のプルトニウム量について、脱北した核技術者の朴元哲氏(パクウォンチョル氏・仮名)は、次のように証言した。

「北朝鮮の核開発は労働党軍需工業部第一副部長の朴松鳳(パクソンボン)が直接掌握しており、毎年計画を作成し、金正日に直接成果を報告していました。1990年代の約10年間、科学者たちが受けていたプレッシャーを、私はよく知っています。核爆弾の小型化を指示され、2000年にはプルトニウムを8kgから6kgまでに少量化できたと朴松鳳は金正日に報告し、科学者たちは表彰されました。目標は4kgでした。しかし、実験もせずに毎年研究報告を上げていた科学者たちは、常に不安を感じていたのです」

 寧辺の核爆弾組立施設で核爆弾を目撃したという朴元哲氏は、プルトニウムが6kgだったため、核実験は失敗したのだろうと語った。科学者たちの心理から察すると、8kgのプルトニウムなら実験を成功させる自信があるのではないかという。だとすると、プルトニウム生産量90 kgを必要量の8kgで割れば、11発という答えになる。すでに、実験で2発を消費しており、計算上では9発となるが、これは少なく見積もった量である。
****************************

 現在のところ北朝鮮は10発ほどの核爆弾を保有していると推測される北朝鮮。惠谷治氏によると「近い将来、技術改良された3回目の核実験が行なわれることは疑いない」とのことだ。

※SAPIO 2010年10月13・20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト