政府は当初「ただちに人体に影響を及ぼす数値ではない」を繰り返した。しかし屋内退避区域を20kmから30kmへ、さらに震災から1か月たった4月11日、ついに30km圏外でも“計画的避難区域”を設定することになった。しかも、その背景にあるのは、原発からの距離だけでは放射線汚染は計れないという指摘だ。政府の発表ははたしてどこまで信じられるのか。
食品の出荷制限においても、当初は都道府県単位の一律な基準でしかみなされていなかった。3月21日、野菜や原乳などから相次いで暫定規制値を超える放射性物質が検出されたことで、国は福島、茨城、栃木、群馬の4県でホウレンソウやカキナなどの出荷停止措置を取った。
しかし、県単位での制限だと、同じ野菜で規制値を超えていないのに同一県内ということで出荷できなかったり、出荷制限を受けていない農産物も「風評被害」にあった。
そのため4月4日、出荷制限の区域を市町村や、県をいくつかのブロックに分けるといった対象地域を細分化して決定することを発表。群馬県産のホウレンソウやカキナ、茨城県全域での原乳などの出荷制限が解除される一方、千葉・香取市、同多古町、旭市でホウレンソウやチンゲンサイなど6品目が新たに出荷制限の対象に加えられた。
さらに、食品の安全基準となっている暫定規制値について疑問を投げかけるのは美作大学大学院教授(食環境科学)の山口英昌氏だ。
「1986年チェルノブイリの事故以降、日本は輸入食品に関してセシウムに特定し食品1kgあたりの規制値を370ベクレルに設定しています。しかし今回の原発問題を受け、3月17日に厚労省が各自治体に通達した暫定規制値は1kgあたり500ベクレル。規制値が甘く設定されてるんです」
つまり、“安全”のお墨つきで市場に出回る国産の野菜のほうが、輸入品の野菜よりも放射線量が多い、ということもあり得るのだ。
※女性セブン2011年4月28日号