国内

電気代値上げ狙う東電 保有の高級資産19物件で1400億円

 東京電力は電気料金値上げに踏み切る構えだが、その前にやるべきことがあるはずだ。論より証拠。東電がどこに自らのオフィスを構え、どんな資産を保有しているのか、お見せしよう。この調査データは「国有化」議論にも一石を投じるはずだ。ジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

 * * *
 東京・足立区。JR北千住駅から徒歩15分の場所に「千住資材センター」がある。隅田川と荒川に挟まれた中州に位置し、資材置き場と足立営業センターとなっているが、敷地内に社宅や総合グラウンドもある。その面積、なんと約6万平方メートル。東京ドームより2まわりほど広い。

 専門家の資産査定では、時価約121億円と見られているが、現地を訪れると、社宅用の建物の窓にはベニヤ板が張られて人の住む気配はなく、グラウンドは芝が剝げている。大部分は事実上の遊休地だ。

 本誌取材班が独自調査した東京周辺の東電グループが保有する資産データがある。それによれば、19物件で、専門家による資産査定の総額は1400億円にのぼる。

 最高額をつけたのは、東電が2010年に取得した港区立三田中学校の仮校舎跡地(1万3000平方メートル)の約283億円。JR田町駅から徒歩10分の場所にあり、付近には地上43階建てのオフィスビルが立地するなど、再開発にはもってこいの場所である。

 他にも千代田区内幸町にある新幸橋ビルディング(区分所有)は約246億円。

 ホテルもある。東電は、東京の日本橋と田町に2つのビジネスホテルを持ち、子会社の東電不動産が経営している。資産価値は2棟で18億4000万円。

 川崎市にある「FISH・ON! 王禅寺」のような変わり種もある。これは東電不動産が経営するルアー釣りやフライ・フィッシングを楽しめる釣り場だ。

「都心から車ですぐ行ける場所にあり、釣り好きの間では有名なスポットです。道具もレンタルできるし、ニジマスなどを釣れば、施設内で調理して食べることもできます」(常連客の一人)

 約5万平方メートルの敷地に4つの池が設置され、ナイター施設が完備。資産査定では5000万円という金額となったが、なぜ、釣り堀経営をしているのか、という疑問に東電は、「売り上げ拡大を目指し、新規事業として開始した。王禅寺は、電気事業上の目的で用地を取得しその役割を終えたことから、有効活用策を検討した結果、管理釣り場の運営に至った。今後売却を予定している」(総務部広報)と回答した。

 政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会(以下、第三者委員会)」は、原則3年以内に時価ベースで2472億円の不動産(具体的な物件は非公表)の売却を実施すべきという最終報告をまとめた。それをもとに東電は「特別事業計画」を作成し、第三者委員会の報告通りに売却する方針を決めたものの、いざ実施するとなると、今年度中に売却できる物件は152億円分とトーンダウン。上記表の物件は未だに東電とそのグループ会社が保有したままになっている。

 こうした現状について東京電力は、「売却の前倒しを進めており、2011年度第3四半期決算時点で既に153億円の不動産を売却した。売却する個別不動産の内訳・処分時期については、回答を差し控えるが、変電所付の不動産は、第三者委員会報告にある通り売却困難と判断しており、賃貸等による有効活用を図っていく」(同前)とした。

 元経産官僚で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の岸博幸氏は政府・東電の姿勢をこう批判する。

「そもそも廃炉費用や賠償費用などを考えれば、東電は事実上の破綻状態にある。だったら破綻させた上で、抜本的な改革を行なうべき。それなのに第三者委員会は東電を救済、再生する前提で報告をまとめた。しかも、不動産売却が『原則3年以内』というのは『例外もある』ということ。また、変電所を移して物件を売ることだって可能なのに、委員会では正面から検討していない。そんな中で『値上げは権利』と言っても、国民の納得を得られるはずがない」

 東電がすべきはまず信頼の回復である。

※SAPIO2012年3月14日号

関連記事

トピックス

不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
千葉県成田市のアパートの1室から遺体で見つかったブラジル国籍のボルジェス・シウヴァ・アマンダさん、遺体が発見されたアパート(右・instagram)
〈正直な心を大切にする日本人は素晴らしい〉“日本愛”をSNS投稿したブラジル人女性研究者が遺体で発見、遺族が吐露した深い悲しみ「勉強熱心で賢く、素晴らしい女の子」【千葉県・成田市】
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《スクショがない…》田中圭と永野芽郁、不倫の“決定的証拠”となるはずのLINE画像が公開されない理由
NEWSポストセブン
多忙の中、子育てに向き合っている城島
《幸せ姿》TOKIO城島茂(54)が街中で見せたリーダーでも社長でもない“パパとしての顔”と、自宅で「嫁」「姑」と立ち向かう“困難”
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
女性アイドルグループ・道玄坂69
女性アイドルグループ「道玄坂69」がメンバーの性被害を告発 “薬物のようなものを使用”加害者とされる有名ナンパ師が反論
NEWSポストセブン
遺体には電気ショックによる骨折、擦り傷などもみられた(Instagramより現在は削除済み)
《ロシア勾留中に死亡》「脳や眼球が摘出されていた」「電気ショックの火傷も…」行方不明のウクライナ女性記者(27)、返還された遺体に“激しい拷問の痕”
NEWSポストセブン
当時のスイカ頭とテンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《“テンテン”のイメージが強すぎて…》キョンシー映画『幽幻道士』で一世風靡した天才子役の苦悩、女優復帰に立ちはだかった“かつての自分”と決別した理由「テンテン改名に未練はありません」
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
《ヤクザの“ドン”の葬儀》六代目山口組・司忍組長や「分裂抗争キーマン」ら大物ヤクザが稲川会・清田総裁の弔問に…「暴対法下の組葬のリアル」
NEWSポストセブン
テンテン(c)「幽幻道士&来来!キョンシーズ コンプリートBDーBOX」発売:アット エンタテインメント
《キョンシーブーム『幽幻道士』美少女子役テンテンの現在》7歳で挑んだ「チビクロとのキスシーン」の本音、キョンシーの“棺”が寝床だった過酷撮影
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
女優・趣里の結婚相手は“結婚詐欺疑惑”BE:FIRST三山凌輝、父の水谷豊が娘に求める「恋愛のかたち」
NEWSポストセブン
タレントで医師の西川史子。SNSは1年3ヶ月間更新されていない(写真は2009年)
《脳出血で活動休止中・西川史子の現在》昨年末に「1億円マンション売却」、勤務先クリニックは休職、SNS投稿はストップ…復帰を目指して万全の体制でリハビリ
NEWSポストセブン