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最高級ブランド枝豆 収穫の旬はたった1~2週間しかない

ブランド枝豆に歴史あり

 夏のビールのお供といえば枝豆だ。山形県鶴岡市の「だだちゃ豆」と新潟県黒埼地区の「黒埼茶豆」が有名ブランドだが、意外なつながりがあった。ビール片手に枝豆をつまみにして読めば、蘊蓄がより面白くなるに違いない。食に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が語る。

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「うだるほど暑い」という言葉がある。「うだる」は漢字で書くと「茹だる」。「ゆであがる」(大辞林)という意味である。8月に入って暑さが本格的になってきた。こんなときはビールである。そしてビールといえば、問答無用で枝豆だ。

 最近では冷凍技術の発達で、一年中枝豆が食べられるようになった。しかし「ビール=枝豆」というイメージの通り、枝豆の旬は夏である。農家によってはトップシーズンの6~8月までの間に、数種類の枝豆の収穫シーズンをズラしながら出荷していくという。というのも、枝豆の旬はとても短いからだ。

 枝豆好きならご存じ、山形県鶴岡市の「だだちゃ豆」、新潟市黒埼地区の「黒埼茶豆」などの旬も、およそ1~2週間と短い。鼻に抜ける香ばしさと、豆を噛み締めると口内に広がる甘さが特徴の枝豆だ。甘味が強く、グルタミン酸を始め、旨味を演出する遊離アミノ酸が普通の枝豆の数倍も含まれているという。

「だだちゃ豆」は、長く山形県鶴岡市の農家で守り育てられてきたという。その名前の由来は、江戸時代にさかのぼる。「だだちゃ」とは庄内の方言で「お父さん」を意味する言葉で、この豆を気に入っていた当時の庄内藩の領主が献上させた豆の生産者知りたさに「この豆はどこの『だだちゃ』の作った豆か」と尋ねたという説が有力視されている。

 そしてその「だだちゃ豆」が新潟県黒埼地区に伝わったのが、明治30年代。当時、黒埼地区から鶴岡市に嫁いだ女性が里帰りのとき持ち帰った豆がルーツになっているという。もともと「だだちゃ豆」は鶴岡以外で育てると味わいが変わると言われていたが、黒埼では独自の品種改良を続け「黒埼茶豆」としての評価を得た。現在では全国的に見ても鶴岡の「だだちゃ豆」と双璧をなす、茶豆のトップブランドとなっている。

 最近では、農家や種苗メーカーの努力による品種改良も進み、「湯あがり娘」「おつな姫」「晩酌茶豆」など、味わい豊かな茶豆の風味を持つ品種も増えてきた。もっとも品種もさることながら、「うまい枝豆を食うために」農家の間でまことしやかに伝えられている格言があるという。

「農家の間では『枝豆はお湯を沸かしてから収穫に行け』という格言があります。収穫したての枝豆の味わいは、それほどまでに格別です!」(埼玉県新座市で農業を営む尾崎秀寿さん)

 暑いなかでこそ、キンと冷えたビールの旨さは倍加する。「うだるほど」の暑さの下で、採れたてを「うでた」枝豆をつまみに、ビールをゴクゴクと飲む。いま僕は至福のひとときを過ごしている。

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