国内

佐藤優氏が明かす日本における「ディープステート」の存在 政治家でも官僚でもなく政府の意思決定に関わる人たち、自らもその一員として「北方領土二島返還案」に関与と告白

日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏

日本にも「ディープステート」が存在すると指摘する佐藤優氏

“政府を裏で操る秘密の組織が存在する”“国家がワクチンによって遺伝子を操作しようとしている”――ネットを中心に流布されるそうした言説は「陰謀論」の一言で片付けられることも多い。しかし、その狭間に“真実”が埋もれていることを見逃してはならない――そう喝破するのは、インテリジェンスの専門家である作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏だ。【第1回】

 * * *
 世界を牛耳るディープステート(闇の政府)が存在し、トランプはそれと戦う救世主だ……。米国大統領選ではそんな主張が展開され、対立する陣営からは「陰謀論」だと一蹴された。だが、本当にディープステートは存在しないのか。筆者はそうは思わない。日本にもディープステートは実在している。

 代議制民主主義の国家で政治を運営していい人間は、本来、2種類しかいない。選挙によって国民に選ばれた政治家と、資格試験によって選抜され、登用された官僚だ。

 ただ、実際にはいずれにもあたらないのに政府の重要な意思決定に深く関わる人々がいる。まさに、「陰謀」に携わる者たちである。

 ロシアなら諜報機関出身のビジネスマンや大統領の同郷者で政府に影響力を持つ者がいた。イスラエルはモサド(諜報特務庁)出身の大学教授や企業顧問がそれにあたる。

 日本で多いのは、開成や筑波大附属駒場など中高一貫の進学校出身者のネットワークだ。とりわけ男子校出身者はホモソーシャルな人間関係を社会人になった後も保つ例が目立ち、官邸や政府から相談を受けるかたちで国家の意思形成に参与している。

 一部大学のゼミや慶應大学出身者の三田会など特殊な例を除けば、大学からのつながりは希薄だ。中高生の頃に先生に告げ口をする人間は、大人になっても口が軽い。権力の中枢にいる政治家や官僚は秘密保持を何より重視するから、“告げ口をしない奴”だとわかっている中高校時代のネットワークが非公式なかたちで重用されるのだろう。

 政府中枢から非公式に相談を受けて意思決定に影響を与えるという意味では、筆者も日本版ディープステートをなすひとりと言えるかもしれない。2018年、北方領土返還を前に進めない外務省に苛立った安倍官邸から相談を受け、二島返還案を具申してこれが政府の方針となった。この陰謀の顛末は、元朝日新聞主筆・船橋洋一氏の著書『宿命の子』の第11章に詳しく書かれている。

 * * *

 関連記事《【佐藤優氏が明かす「陰謀論」の正体】「日本版ディープステートは実在する」 荒唐無稽と一蹴せず狭間に埋もれた“真実”を見逃さないことが混乱する世界を読み解く鍵に》では、インテリジェンスのプロである佐藤優氏が、「反ワクチン」から「安倍元首相銃撃犯」まで、日本と世界を揺り動かす陰謀論の正体を解き明かし、“でたらめの陰謀論”こそが“真の陰謀”を覆い隠すと分析している。

【プロフィール】
佐藤優(さとう・まさる)/1960年、東京都生まれ。作家、元外務省主任分析官。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。『自壊する帝国』で大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞受賞。『国家の罠』『獄中記』など著書多数。近著に片山杜秀氏との対談本『生き延びるための昭和100年史』がある。

※週刊ポスト2025年12月26日号

関連記事

トピックス

実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
東条英機・陸軍大将(時事通信フォト)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最低の軍人」ランキング ワースト1位はインパール作戦を強行した牟田口廉也・陸軍中将 東条英機・陸軍大将が2位に
週刊ポスト
昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト