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豚の冷しゃぶは夏バテに効くが、豚だけ食べるのはNGと識者

夏バテ対策食の定番、豚の冷しゃぶ

 夏バテ対策によくお勧めされる「豚しゃぶ」。なぜ豚肉なのか、なぜトンカツでもトンテキでもなく「しゃぶ」なのか。食に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 今年も夏バテに効く食事の話題があちこちのメディアに登場した。そして「夏バテ」特集に必ず取り上げられるのが、「豚の冷しゃぶ」である。うなぎなど、昔ながらの夏バテ対策食もあるが、たいていのメディアで「豚の冷しゃぶ」が登場する。その理由はこうだ。

 まず夏バテとは、一般には「暑さのため、食欲が減退したり、冷たい水分の摂り過ぎで体調を崩し、内臓の機能が低下してしまう」症状を総称する。ただでさえ、疲れやすいところに食が進まず、栄養が偏れば症状はますます進行する。例えば、ビタミンB1は炭水化物がエネルギーに変わるときに欠かせない栄養素だ。そのビタミンB1を補給するために、豚肉が推奨されるというわけだ。

 それにしても、なぜ「豚しゃぶ」なのか。他にも豚肉を使ったメニューはいくらでもあるはずだが……。確かに「豚肉=ビタミンB1」、「ポン酢=クエン酸で疲労回復」は事実のようだが、「豚しゃぶ」が推奨される理由、仕組みは次のとおりだ。

・豚肉のビタミンB群によって、糖質がエネルギーに変わる。
・疲労物質、乳酸を分解し、体外に追い出すクエン酸を摂取。

 確かに夏バテ対策としては、圧倒的に正しいようだ。エネルギー生産をしっかり行い、体内から疲労物質を追い出すことで夏バテは防ぐことができるという。だが、実は「豚」だけでは、かえって夏バテを促進してしまう危険が考えられるのだ。

 豚肉は確かにビタミンB1という大切なビタミンを備えている。ただし、一方で豚肉を大量に食べると夏バテにつながるメカニズムもあるという。肉を食べ過ぎると疲労の原因物質のひとつ、ピルビン酸が体内に増加してしまうのだ。ピルビン酸が増えると、乳酸が体内に溜まってしまう。夏バテ防止のために食べたはずの豚肉で、夏バテが悪化などとなったら目も当てられない。

 そこでクエン酸である。実は柑橘類や酢――つまりポン酢などのクエン酸は豚肉と一緒に摂取することで、大量に豚肉を食べた時のピルビン酸をクエン酸に変えてくれるという。つまりエネルギーを効率的に生み出すために豚肉は欠かせないが、豚肉により疲労物質が溜まりやすくなりかねない。そこで疲労に効くクエン酸を同時に摂取すれば、豚肉摂取に由来する疲労物質を追い払うこともできる。ポン酢などに含まれるクエン酸には、ダブルの疲労防止効果が期待できるわけだ。

 ちなみに牛肉に含まれるビタミンB1の量は、豚肉の約1/10。その含有量を見ると、摂取するなら豚肉が圧倒的におすすめされてしかるべきではある。

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