ネット上では苛烈な声を上げる残念な人がうごめいている(写真/イメージマート)
日々のニュースや何らかの騒動に対して、当事者でもないのにネット上などで苛烈な声を上げる人たちがいる。コラムニストの石原壮一郎さんが、そうしたネットで見かける「残念な人オールスターズ」で打線を組んでみた。石原さんが解説する。
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ご存じのとおり、ネット空間には種々雑多な「残念な人」がうごめいています。見るともなしに見てしまうと、ドンヨリした気持ちにさせられずにいられません。ただ、ネットで情報を得たりSNSを使ったりしている限り、見ないで過ごすことは不可能です。
せっかくなので、前向きな方向で活用させてもらいましょう。「残念な人」は例外なく元気いっぱいで、それぞれに個性や持ち味があります。ズラリと並べれば、向かうところ敵なしの強力打線が組める気がしないでもありません。さっそく、試してみましょう。
常に「獲物」の探索に余念がない。“ハイエナ”のように群がり…
トップバッターは、その日のうちに消費される“足の早いネタ”を取り扱っている「朝ドラにイチャモンを付けて鼻の穴をふくらませている人」でどうでしょうか。人並外れた(と自分では思っている)選球眼で、一話ごとの「ストライク」と「ボール」を見極めてチクチク文句を言い続けています。
大切なのは、出塁率を上げたりピッチャー(ドラマ)のスキを突いて盗塁(上手な悪口で同好の士の賞賛を得ること)を決めたりすること。そのために日々、全力であら探しをしながらドラマを見なければなりません。はた目には「素直にドラマを楽しめなくて気の毒」としか思えませんが、そんな声を振り切るために今日も疾走し続けています。
2番バッターは、有名人が物議を醸す投稿で炎上したときに「追随して『そうだそうだ』と安全圏から囃し立てる人」。バントのように塁に出たランナーをアシストしている一面もありますが、匿名で虎の威を借ってイキっているだけなので、自分が犠牲になるつもりはありません。そのくせ「言ってやったぜ」という満足感はちゃっかり味わっています。
続いてはクリーンナップ。左右に打ち分ける打撃が求められる3番バッターは、「気に食わない主張の政党の支持者を見下して鼻で笑う人」。レフト方向にもセンター方向にもライト方向にも、この類の人たちが打った打球は飛んでいきます。
しかし、しょせんは誰かを見下して自分は賢いと思いたいという単純な動機に突き動かされているだけなので、クリーンヒットが放たれることはありません。ずっと左バッターだったのに、何に感化されたのか気が付くと右バッターになっているケースも、ままあります。どっちにしても、ボールをよく見ないで振り回す癖は同じですが。
長打力を備えた4番バッターは「クマを駆除した自治体に抗議の電話をかける人」。直接ではなく、そういう人がたくさん湧いたというニュースを通じて目にします。クマの被害に悩む地域から距離があればあるほど、持ち前の長打力を発揮して、独りよがりな抗議電話という迷惑な打球を迷いなく執拗に打ち込みます。
多くの人は「よく恥ずかしげもなく、人の命よりもクマの命が大事みたいな主張ができるもんだ」と首を激しく傾げずにはいられません。周囲の目なんて気にせず、自分の信じる道を貫けるという点も、きっと4番バッターに必要な素養なのでしょう。
ある意味、4番バッターと一心同体である5番バッターは「クマの駆除に抗議の電話をかける類の残念な人を全力で罵倒する人」。ネット上で安定した“人気”を誇っているのは、クマの駆除に抗議の電話をしたり、駅のホームで女性にわざとぶつかっていくおじさんなど「迷いも遠慮もなく非難できる人たち」です。
ネットで物申すことが好きな人たちは、常にそういう「獲物」の探索に余念がありません。見つけるとハイエナのように群がり、正義のバットを思いっ切り振り回して、勇ましい自分に満足感を覚えたりストレスを解消したりします。4番あっての存在という点でも、目指す方向や目的は同じという点でも、5番にふさわしいと言えるでしょう。