「難しい経済誌より『女性セブン』のほうが経済が見える」と、2011年5月に開始した連載を「できる限り続けたい」と言っていた金子哲雄さん(享年41)。以下の原稿は、金子さんが亡くなる4日前、9月27日に仕上げてくださったもの。スーパーなどの現場に行けなくなった金子さんは、チラシやネットで最後まで情報収集していた。
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最近、スーパーのチラシに目玉商品として、洗剤ではなく柔軟剤が掲載されることが増えています。新製品もどんどん出ている。そんななか、消費者は洗剤と柔軟剤のベストな組み合わせがわからずにいるのだということが、この記事からわかりますね。
柔軟剤と洗剤の組み合わせを紹介したこの記事のキーワードは、「関連購買」です。小売り側としては、どれとどれをくっつけて提案すると売れるのかがとても大切なのです。
この記事ではタレントや洗剤アドバイザー、一般の主婦が登場して、好みの組み合わせを紹介しています。それによってトップ(ライオン)×レノア(P&G)と、メーカー違いの組み合わせが出てくる。
雑誌のいいところは、こうやってメーカーの壁を取り払って紹介できることですね。たとえば花王の主導で提案すると、どうしてもフレア×フレア(いずれも花王)の組み合わせになっちゃいますから。
よい関連購買は、値段以上のコストパフォーマンスを生み出します。たとえばアタック298円とダウニー980円で1278円。でも消費者は1500円以上の価値が感じられることもあるわけです。
財布のひもが固いといわれるなかでも、主婦は少し前までなくても済んだ香りの柔軟剤のために、980円もプラスして買う気持ちがあることが改めて読み取れます。今は物が売れないなんて結論づける世のオジサンたちは、この意味を考えるべきですね。
この数か月にセブンでは、洗濯の香りに関する記事を何回も掲載しています。つけ加えておくと、ぼくは、嗅覚マーケットはこれから来ると思いますよ。
※女性セブン2012年11月8日号