芸能

宍戸錠×吉田豪 名画『殺しの烙印』は俺も意味がわからない

 宍戸錠氏が主演し、鈴木清順監督の最高傑作の一つといわれるのが『殺しの烙印』。今でこそ伝説のカルトムービーともいわれるが、上映当時は印象が違ったという。日活の歴史を知る宍戸氏が当時の知られざるエピソードを語った。『週刊ポスト』に掲載された記事のノーカット版を『メルマガNEWSポストセブン』で連載中だが、ここでは11月2日配信のVol.38掲載分からプロインタビュアー吉田豪氏による珠玉のインタビューを公開する。

 * * *
宍戸:きのう、三時間ぐらいしか寝られなくて、本(※『シシド 完結編~小説・日活撮影所百周年記念』(角川書店))のゲラ直しをしてたからさ。

──自伝小説『シシド』の続編ですか。あれも変わった本でしたよね。あんなに客観的に書いた、しかも自分で書いてる本って珍しいですよ。

宍戸:僕、文章うまいんですよ(笑)。結構日記を書いてるから。売れないころは、どこのロケに行ったまで全部書いてありますよ。明日の予定、仕事は朝九時開始。監督、寄りのときはバーッとこっちのヤツを撮ればいいんだよ。こんちくしょうとか…そういうことも平気で書いてたよ。それは読ませませんけどね(笑)。

──日記に書くことでスッキリして。

宍戸:書きました。あのね、好き嫌いが激しいんだ、僕は。監督もいま生きてるヤツは一人しかいないんですよ、好きな人は。

──そうなんですか!

宍戸:うん、あとみんな死んじゃった(あっさりと)。

──嫌いな人が生き残ってる感じで。

宍戸:嫌いなヤツばっかり(笑)。

──嫌いな人と仕事をしたときは直接ぶつかったりもするんですか?

宍戸:そいつは石原プロにかわいがられてたようなヤツだから、なんだか偉そうにしやがって、「みんなの前であんなことを俺に言うんじゃないよ」とかさ「言っちゃ悪いのかよ、おまえがそういう態度をしてるからやってるんだろ」で、大体おしまい。

──ハッキリ言うんですね(笑)。

宍戸:「年寄りにリハーサルで横浜の街を100mも走らせるんじゃねえよ、こんちくしょう。ぶっつけでいけ、本番をやるときは走るけれども、若いのがあれはやれ、それをカメラが追え」みたいなことは言う。それはMっていうんだけど、書いたっていいよ。そいつはまだ生きてる。

──生きてますね(笑)。ちなみに、ほかにまだ生きている好きな監督っていうのは?

宍戸:鈴木清順はまだ生きてる。

──清順さんも若い彼女ができて(※鈴木清順氏は昨年88歳で40歳の女性と結婚)。

宍戸:そうですよ。40歳ぐらいですよね。清順さんが7年間、映画界から干されたときがあって。『殺しの烙印』っていう映画をつくったら、これは一応、名画って言う人と…。

──サッパリわからないって人もいるけど、いまとなっては高く評価されてますよね。

宍戸:うん、そうですよね。ウチのかみさんもみんなも喝采を送ってたのに、俺は主役だけど、あんまり見てねえんだよ(笑)。

──ダハハハハ! なんだこれって感じだったんですか?

宍戸:何が言いたいの?って。鈴木清順さんが、この意味をだれにも教えないんだけど、俺もわからない(笑)。堀久作(日活の元社長)が、「誰だ、こんなわかんねえ映画をつくるヤツは」って。「わかんねえのはおめえだ、バカだから」…とは言わないよ。聞こえないように言ったけど(笑)。「こいつ(清純)はクビだ!」となってね。それはねえだろって。それで、もう一人、江守専務って名物男がいたんだけど、そいつも「いやあ、あのオッサンは言い出すと、もうわかんねえから。しょうがねえや、これは。俺もわからなかったから」って。「これがわかんないとダメだぞ、おめえもクビになるぞ」って言おうと思いながら、言ったね。

──言ったんですか、それは(笑)

<※次週のメルマガ続く>

<宍戸錠氏プロフィール>
ししど・じょう。1933年大阪府生まれ。1954年、日活ニューフェイス第一期生としてトップ合格し、翌55年に『警察日記』でデビュー。タフでハードボイルドな「エースのジョー」として人気を得て、石原裕次郎、小林旭らとともに日活のスターとなる。『拳銃は俺のパスポート』など300本以上の映画に出演してきた。その役者人生を綴った自伝的小説の完結編『シシド 完結編~小説・日活撮影所百周年記念』(角川書店)は11月30日発売予定

※メルマガNEWSポストセブンVol.38

トピックス

大阪・関西万博内の『景福宮』での重大な疑惑が発覚した(時事通信)
《万博店舗スタッフが告発》人気韓国料理店で“すっぱい匂いのチャプチェ”提供か…料理長が書いた「始末書」が存在、運営会社は「食品衛生上の問題はなかった」「異常な臭いはなかった」と反論
NEWSポストセブン
63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志さん
《63歳で初めて人生を振り返った俳優・小沢仁志》不良役演じた『ビー・バップ』『スクール☆ウォーズ』で激変した人生「自分の限界を超える快感を得ちまった」
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
サッカー界のレジェンド・釜本邦茂さんが「免許返納」密着取材で語っていた「家族に喜んでもらえることの嬉しさ」「周りの助けの大きさ」
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがニューシングル『Letter』をリリース(写真・左/AFLO、写真・右/Xより)
羽生結弦の元妻のバイオリニスト・末延麻裕子さん、“因縁の8月”にニューシングル発売 羽生にとっては“消せない影”となるのか 
女性セブン
中学生記者・川中だいじさん(14)が明かした”特ダネ”の舞台裏とは──
「期末テストそっちのけ」中学生記者・川中だいじさん(14)が抜いた特ダネスクープの“思わぬ端緒”「斎藤知事ボランティアに“選挙慣れ”した女性が…」《突撃著書サイン時間稼ぎ作戦で玉木氏を直撃取材》
NEWSポストセブン
釜本邦茂さん
メキシコ五輪得点王・釜本邦茂さんが語っていた“点取り虫”になる原点 “勝負に勝たなければならない”の信念は「三国志」に学んでいたと語る
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト
夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン