ライフ

家庭劇の世界的名手が撮るドラマが低調の理由を女性作家分析

 昔から似て非なるものだといわれてきた。鳴り物入りで始まったドラマの不調がはからずもそれを象徴しているのかもしれない。作家で五感生活研究所の山下柚実氏が、ドラマと映画の違いについて分析する。

 * * *
 話題を集めているフジテレビのドラマ「ゴーイング マイ ホーム」(火曜午後10時)。11月13日の第5話は、視聴率6.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったとか。

 初回の視聴率が13.0%。それが第2話8.9%、第3話8.4%、第4話7.7%と、下降の一途をたどっているというのです。頻繁に耳にする視聴者の感想は、「とにかく退屈」「間延びしている」「ねむい」……。

 数々の賞を受賞し、「巨匠監督」「世界的映画監督」という呼び声も聞かれる是枝裕和監督が、しかも初めて挑んだ連続ドラマです。是枝氏は監督だけでなく脚本も務めるとあって、大きな期待を集めました。

 そして、「16年ぶりの連続ドラマ出演」と鳴り物入りでキャスティングされた山口智子に、夫役は阿部寛。さらに宮崎あおい、西田敏行、阿部サダヲなどを揃えて、豪華なキャスティング。長野を中心とした現地ロケ。ドラマに出てくる小人「クーナ」の絵本も刊行。ここまで周到に準備し、仕掛けた上で、蓋をあけたらコケてしまった、というのでは……。

 いったいなぜ? その視聴率の低さに、話題が集中しているような状況です。

 是枝監督は、たしかに、家庭劇映画の名手なのかもしれません。2時間という限定された枠組みの中で、微妙な人間関係と緊張感、小さな出来事をめぐるやりとりの妙、リアルな空気感を醸し出すことは得意な監督なのでしょう。

 ところがその手法を、10回も続くテレビの連続ドラマむけに翻訳し適応しようとしても、映画とはワケが違ってしまった、ということでは……。

 映画とドラマ、何が違うのか?

 決定的に違う点があります。それは、テレビは「お茶の間で見る」ということ。お茶を飲んだり会話をしたりしながら、のんびりと見る。つまり、日常空間の中で視聴しているのです。

 さほど事件もストーリーもなく、他愛のない会話と日常を描いたドラマを提示しても、見ている人が意識を集中させて受けとめるには、キビシイものがある。それではなかなかドラマを楽しむことはできません。

 何よりも、テレビドラマにはCMが挿入される。まったく別世界の断片が、ドラマ世界に突然差し挟まれるのですから、よけいに注意が散漫にならざるをえない。普通の感覚、自然な会話、リアルな空気感を醸し出そうとする是枝ワールドは、残念ながら、テレビ的視聴スタイルとは相性が良くないのでは。

 奇しくも、放映中のNHK朝ドラ「純と愛」と対比してみると、テレビドラマなるものの「特徴」がはっきりと見えてくる気がします。「純と愛」は毎日15分という短い時間に必ず、事件や予期せぬ出来事、意外な展開、出会いなどがバタバタと起こります。常にメリハリが強調されます。それによって、視聴者の集中がかきたてられ、視聴率17%台を維持できているのではないでしょうか。

「純と愛」という作品に対しての賛否はいろいろありますが、少なくとも「家政婦のミタ」の脚本も手がけた遊川和彦氏は、長年テレビ界で生きてきた人。だから、テレビというメディアのクセや特徴や勘所を、知り尽くしている。 

 映画とテレビドラマ、一見似ている世界でも、視聴する側の集中の仕方は水と油。テレビドラマとは、日常では成り立たないような「転換」「飛躍」「アクセント」によって、次回への興味をつなげていくことが必要な娯楽なのでしょう。

トピックス

野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
川道さら
【「今日好き」で大ブレイク】20歳を迎えた川道さらが語った仕事への思い「お酒で体重増えたから毎日9~10㎞走っています」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
決勝の相手は智弁和歌山。奇しくも当時のキャプテンは中谷仁で、現在、母校の監督をしている点でも両者は共通する
1997年夏の甲子園で820球を投げた平安・川口知哉 プロ入り後の不調について「あの夏の代償はまったくなかった。自分に実力がなかっただけ」
週刊ポスト
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト
離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
【観光客が熊に餌を…】羅臼岳クマ事故でべテランハンターが指摘する“過酷すぎる駆除活動”「日当8000円、労災もなし、人のためでも限界」
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン