国際情報

中国次期首相・李克強氏 太子党や上海閥の醜聞攻撃の標的か

 5年に一度開かれる中国共産党大会では習近平国家副主席が総書記に就任。そのライバルとみられる李克強・筆頭副首相も最高指導部である党政治局常務委員に再選された。今後の政権運営や来年春の全国人民代表大会(全人代)における閣僚人事などをめぐって権力闘争が激化していくとみられる。
 
 このため、李氏は習氏ら太子党(高級幹部の子弟)や上海閥(江沢民前国家主席派)による攻撃の“標的”となるのは必至との見方が浮上している。中国問題に詳しいジャーナリストの相馬勝氏が分析する。

 * * *
 党大会における党最高指導部人事をめぐっては、米大統領選のネガティブキャンペーンに負けず劣らず、さまざまな情報工作がなされた。その典型的な例が指導者のファミリービジネスの暴露合戦だった。

 まずは、重慶事件で3月に失脚した薄熙来・重慶市党委書記のファミリービジネスの実態が欧米各紙を中心に暴露された。とくに、薄氏の妻、谷開来氏に殺害されたビジネスマンが英国籍だったことから、英紙によるスクープ合戦は熾烈を極め、薄ファミリービジネスや女性スキャンダルを含めて、ダーティな実態が次々と露呈していった。

 薄氏の実兄が香港で中国系銀行の最高幹部を務めていたり、香港の企業の顧問に収まって多額のアドバイス料を受け取っていたほか、谷氏の姉や妹も香港を拠点に印刷関連の大企業を経営し、中国政府機関から膨大な額のビジネスを受注したことが暴露された。薄氏自身も巨額の裏金を作っていたとの報道もあった。

 さらに、米経済・金融専門通信社のブルームバーグが習氏のファミリービジネスをすっぱ抜くなど、これによって、薄氏同様、太子党に属する習氏や薄氏と近いとされる上海閥が大きな打撃を被り、胡錦濤主席ら共青団(共産主義青年団)閥から激しい攻勢を受け、劣勢に追い込まれていった。

 ところが、党大会の開催間際の先月下旬、胡主席と近い温家宝首相のファミリービジネスの実態が米紙ニューヨーク・タイムズによってスクープされ、90歳の温首相の母親の株式保有など全部で24億ドルもの資産を保有していることが分かり、温首相の「清廉」とか「国父」とのクリーンとのイメージはかなりダウンした。

 これは、薄氏に近い関係者によって、リークされたのではないかとの観測が飛びかっている。

 党大会では最高指導部人事では太子党や上海閥が影響力を発揮したとの見方が強いが、次の権力闘争の焦点は3月の全人代の閣僚人事だ。財政相や外相、鉄道相などの重要ポストが争点で、習氏ら太子党と上海閥の連合軍と、次期首相就任が確実視される李氏を擁する共青団閥の暗闘が予想される。

 そこで、攻撃材料として浮上しているのが、李氏の実弟の李克明氏だ。ブルームバーグはすでに、国家煙草(たばこ)専売局の副局長を務めている克明氏についての記事を配信。同局はたばこの販売などで巨大な利権を持ち、6千億元(約7兆2千億円)の収入がある。

 首相の実弟が副局長を務めていることで、李克強氏に身内優先のダーティなイメージが定着する可能性は否定できない。同記事では米有力シンクタンクの中国問題専門家の発言として「李が首相になるなら、利害対立を避けるため実弟を別の部署に異動させるべきだ」と指摘した。

 このため、温首相同様、「クリーンなイメージが強い李氏にダメージを当たるのに格好の材料」と北京の政治観測筋は指摘する。

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン