国内

原発政策の論点は未来の党も自民党も似たようなものとの指摘

 衆議院選挙戦は中盤に差しかかっている。政策の争点はいろいろあるが、原発・エネルギー政策を取り上げてみよう。新聞を読んでいると、脱原発をめぐって各党の意見は鋭く対立しているように見える。ジャーナリストの長谷川幸洋氏がその主張を分析する。

 * * *
 まず日本維新の会である。創設者の橋下徹・代表代行は当初、脱原発を強く訴えていた。ところが石原慎太郎・前東京都知事と一緒になってから怪しくなってきた。代表の石原は「脱原発を目指さない」とはっきり語っている。それはそうだろう。石原はかねて核武装のシミュレーションも唱えてきた。それなら核燃料サイクルの中止も容認できるわけがない。

 橋下はどうするのかと思ったら「既存原発は2030年代までにフェードアウト」という話も「議論のたたき台であり公約ではない」と後退した。橋下は石原に押し込まれている。

 そもそも「既存原発をフェードアウト」だったら、それだけで脱原発にはならない。40年廃炉原則を守れば、何もしなくても既存の原発が消えていくのは当然である。問題は新設や増設、入れ替えなどを認めるかどうかなのだ。ところが、公約はそこに触れていない。

 たとえば、建設を再開した電源開発・大間原発について2018年の稼働を認めるなら、40年後の2058年まで原発はなくならない公算が高くなる。このあたりが不明である。

 日本未来の党はどうか。ここは第3極の中でも先鋭的な脱原発派とみられている。Facebookに公開された「卒原発カリキュラム」をみると「どんなに遅くとも10年後には完全に原発から卒業する」と目標を掲げた。当初3年間を「未来への助走期」と位置付け、大飯原発の即時停止や原発の新増設禁止を公約した。

 注目されるのは使用済み核燃料の総量規制実施である。使用済み核燃料は目下、捨て場がない。そこで総量を規制すれば、おのずと原発は止める以外になくなる。しかし原発を止めると、六ヶ所村で再処理している青森県は「もう使用済み核燃料を引き受けない。元の場所に返す」と言い出す。

 原発を止めるのに使用済み核燃料を引き受ければ、青森県が核のゴミ捨て場所になってしまうからだ。結局、真の問題は核のゴミ捨て場所をどうするかなのだ。脱原発を現実論にするには、その解を見出す必要がある。いくら止めると言ったって、青森県にゴミの後始末を押し付けるわけにはいかない。国民が納得できる捨て場所を見つけるには3年くらいはかかるだろう。

 そこで自民党の公約をみると、ここは「3年間、最大限の再生可能エネルギー導入と省エネを推進する。原子力規制委員会の判断を優先して再稼働を順次判断し、すべての原発について3年以内の結論を目指す」という。動かせる原発は動かすが、止める可能性もあるという立場だ。この点は私も出演した12月1日のテレビ朝日系列『朝まで生テレビ!』で世耕弘成・政調会長代理が確認した。

 こうみてくると、私には「未来も自民も似たようなものじゃないか」と思えてくる。いま結論を持ち合わせていないから、3年間議論すると言っているのだ。

 そうだとすると、脱原発を目指す立場から見渡しても「どの党がゴミ捨て場所を見つけて国民合意を取り付けられるか」が真の判断基準になる。難問から目をそらさずに挑戦するのか、それとも口だけなのか。有権者はそこを見極めねばならない。(文中敬称略)

※週刊ポスト2012年12月21・28日号

関連記事

トピックス

新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
安達祐実、NHK敏腕プロデューサーと「ファミリー向けマンション」半同棲で描く“将来設計” 局内で広がりつつある新恋人の「呼び名」
NEWSポストセブン
第69代横綱を務めた白鵬翔氏
白鵬“電撃退職”で相撲協会に大きな変化 旭富士のデビューほか「宮城野部屋再興」が前提とみられる動きが次々と
週刊ポスト
夫から殺害されたホリー・ブラムリーさん(Lincolnshire PoliceのSNSより)
《凄惨な犯行の背景に動物虐待》「妻を殺害し200以上の肉片に切断」イギリスの“怪物”が殺人前にしていた“残虐極まりない行為”「子犬を洗濯機に入れ、子猫3匹をキッチンで溺死させ…」
NEWSポストセブン
還暦を迎えられた秋篠宮さま(時事通信フォト)
《車の中でモクモクと…》秋篠宮さまの“ルール違反”疑う声に宮内庁が回答 紀子さまが心配した「夫のタバコ事情」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《株や資産形成の勉強も…》趣里の夫・三山凌輝が直近で見せていたビジネスへの強い関心【あんかけパスタ専門店をオープン】
NEWSポストセブン
“ミヤコレ”の愛称で親しまれる都プロにスキャンダル報道(gettyimages)
30歳差コーチとの禁断愛の都玲華は「トリプルボギー不倫」に学んだのか いち早く謝罪と関係解消を発表も「キャディよりもコーチ変更のほうが影響は大きい」と心配の声
週刊ポスト
小芝風花
「頑張ってくれるだけで」小芝風花、上海でラーメン店営む父が送った“直球エール”最終回まで『べらぼう』見届けた親心
NEWSポストセブン
安青錦(時事通信フォト)
最速大関・安青錦は横綱・大の里を超えられるのか 対戦成績は0勝3敗で「体重差」は大きいものの「実力差は縮まっている」との指摘も
週刊ポスト
熱愛が報じられた長谷川京子
《磨きがかかる胸元》長谷川京子(47)、熱愛報道の“イケメン紳士”は「7歳下の慶應ボーイ」でアパレル会社を経営 タクシー内キスのカレとは破局か
NEWSポストセブン
三笠宮妃百合子さまの墓を参拝された天皇皇后両陛下(2025年12月17日、撮影/JMPA)
《すっごいステキの声も》皇后雅子さま、哀悼のお気持ちがうかがえるお墓参りコーデ 漆黒の宝石「ジェット」でシックに
NEWSポストセブン
熱愛が報じられた新木優子と元Hey!Say!JUMPメンバーの中島裕翔
《20歳年上女優との交際中に…》中島裕翔、新木優子との共演直後に“肉食7連泊愛”の過去 その後に変化していた恋愛観
NEWSポストセブン
記者会見に臨んだ国分太一(時事通信フォト)
《長期間のビジネスホテル生活》国分太一の“孤独な戦い”を支えていた「妻との通話」「コンビニ徒歩30秒」
NEWSポストセブン