ビジネス

日本は「世界で最も破綻から遠い国」とマーケット評価の分析

 国債、国の借入金、政府短期証券の残高合計は2013年3月末に1000兆円を超える見込みだ(財務省発表)。積極財政を進めるアベノミクスのもと、この数字は拡大を続けるのか。日本がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性は本当にないのか。大阪経済大学客員教授の岩本沙弓氏が解説する。

 * * *
 1月29日、安倍政権は2013年度予算案を閣議決定した。新規国債発行額は42兆8510億円に抑えられ、4年振りに税収を下回った。しかし、昨年の総選挙で自民党は10年間で200兆円もの巨額投資を行なう「国土強靱化計画」を公約として掲げた。それを実行するとなれば、今後も多額の国債発行が必要であり、国債などの残高合計は増え続け、これまで以上に「日本破綻論」が喧伝されるだろう。

 ただし、国債金利が上昇(価格が下落)することはあっても、それによって直接、あるいはすぐに日本がデフォルト危機を迎えることはない。むしろ、日本は「世界で最も破綻から遠い国」である。

 メディアは国債などの残高を「国の借金」と表現するが、正確に言えば日本という国全体の借金ではなく、あくまでも「政府の負債」である。そして、その大半を占める国債残高(国庫短期証券を含む948兆円。2012年9月末時点)のほとんど(90.9%。2012年9月末時点。日本銀行発表)を日本の金融機関、すなわちそこに預貯金している日本国民が支えている。

「政府の負債」=「国民の資産」であり、日本という国全体では負債と資産がほぼ帳消しになる。所詮、同じ財布の中での貸し借りにすぎないのである。しかも、負債の一方で「政府の資産」は481兆円あり(2012年9月末時点。日本銀行発表)、国債の償還能力にもそれほど問題はない。景気浮揚策が狙い通りに効果をあげ、GDP(国内総生産)が増大すれば、増税せずとも自然に税収は増える。そうなれば借金返済も可能だ。

 過去、1998年にロシアが、2002年にアルゼンチンが、2008年にエクアドルがデフォルトしたが、それらの国は債務全体の50~70%が海外投資家に対するものだった。そのため、国全体で大幅な債務超過だった。

 さらに、日本の場合、“国内の財布”に収まりきれない多額の余剰資金――日本が海外に持つ資産から海外勢が日本に持つ資産(日本にとっては負債)を差し引いた「対外純資産」は、2011年末時点で265兆円余りに上り(内閣府発表)、21年連続世界一である。

 こうしたことから、マーケットは日本を「世界で最も破綻から遠い国」と見ている。その証拠に、日本の国債の利回りはスイスに次いで世界で2番目に低い水準を続けている。また、過去20年ほどの間、ソロス・ファンドなど海外の名だたるヘッジファンドが日本国債の売り崩しを狙ったが、一度も成功していない。

※SAPIO2013年3月号

関連記事

トピックス

事実上の戦力外となった前田健太(時事通信フォト)
《あなたとの旅はエキサイティングだった》戦力外の前田健太投手、元女性アナの年上妻と別居生活 すでに帰国の「惜別SNS英文」の意味深
NEWSポストセブン
1992年にデビューし、アイドルグループ「みるく」のメンバーとして活躍したそめやゆきこさん
《熱湯風呂に9回入湯》元アイドル・そめやゆきこ「初海外の現地でセクシー写真集を撮ると言われて…」両親に勘当され抱え続けた“トラウマ”の過去
NEWSポストセブン
笑顔に隠されたムキムキ女将の知られざる過去とは…
《老舗かまぼこ屋のムキムキ女将》「銭湯ではタオルで身体を隠しちゃう」一心不乱に突き進む“筋肉道”の苦悩と葛藤、1度だけ号泣した過酷減量
NEWSポストセブン
左:激太り後の水原被告、右:
【激太りの近況】水原一平氏が収監延期で滞在続ける「家賃2400ドル新居」での“優雅な生活”「テスラに乗り、2匹の愛犬とともに」
NEWSポストセブン
折田楓氏(本人のinstagramより)
「身内にゆるいねアンタら、大変なことになるよ!」 斎藤元彦兵庫県知事と「merchu」折田楓社長の“関係”が県議会委員会で物議《県知事らによる“企業表彰”を受賞》
NEWSポストセブン
“ボディビルダー”というもう一つの顔を持つ
《かまぼこ屋の若女将がエプロン脱いだらムキムキ》体重24キロ増減、“筋肉美”を求めて1年でボディビル大会入賞「きっかけは夫の一声でした」
NEWSポストセブン
チームを引っ張るドミニカ人留学生のエミールとユニオール(筆者撮影、以下同)
春の栃木大会「幸福の科学学園」がベスト8入り 元中日監督・森繁和氏の計らいで来日したドミニカ出身部員は「もともとクリスチャンだが幸福の科学のことも学んでいる」と語る
NEWSポストセブン
横山剣(右)と岩崎宏美の「昭和歌謡イイネ!」対談
【横山剣「昭和歌謡イイネ!」対談】岩崎宏美が語る『スター誕生!』秘話 毎週500人が参加したオーディション、トレードマークの「おかっぱ」を生んだディレクターの“暴言”
週刊ポスト
”乱闘騒ぎ”に巻き込まれたアイドルグループ「≠ME(ノットイコールミー)」(取材者提供)
《現場に現れた“謎のパーカー集団”》『≠ME』イベントの“暴力沙汰”をファンが目撃「計画的で、手慣れた様子」「抽選箱を地面に叩きつけ…」トラブル一部始終
NEWSポストセブン
母・佳代さんのエッセイ本を絶賛した小室圭さん
小室圭さん “トランプショック”による多忙で「眞子さんとの日本帰国」はどうなる? 最愛の母・佳代さんと会うチャンスが…
NEWSポストセブン
春の雅楽演奏会を鑑賞された愛子さま(2025年4月27日、撮影/JMPA)
《雅楽演奏会をご鑑賞》愛子さま、春の訪れを感じさせる装い 母・雅子さまと同じ「光沢×ピンク」コーデ
NEWSポストセブン
自宅で
中山美穂はなぜ「月9」で大記録を打ち立てることができたのか 最高視聴率25%、オリコン30万枚以上を3回達成した「唯一の女優」
NEWSポストセブン