国内

安倍首相公約の“消えた年金”調査 いまだ2200万件宙に浮く

 天知る、地知る、人ぞ知る。安倍首相がこう誓ったことを国民は忘れていない。

「最後の1人まで探し出して、年金を払います」──2007年当時、安倍第1次政権を揺るがした「消えた年金問題」で、5000万件の年金記録が失われていることが発覚し、その後、民主党政権時代を通じて照合作業が行なわれたが、「最後の1人」どころか、現在もまだ約2200万件が宙に浮いたままだ。

 昨夏、民自公が「社会保障のため」と消費増税に走ったのも、もとを質せば消えた年金問題で年金制度の破綻が明らかになったことがきっかけだった。

 ところが、首相に返り咲いた安倍首相は6年前の誓いに知らん顔を決め込み、全国50か所に設置されている年金記録確認第三者委員会のうち41か所を廃止する方針を決めた。言葉を翻して、コッソリと「消えた年金」問題の幕引きにかかっているのだ。

 さる5月11日、田村憲久・厚生労働相は参院選に向けた山梨県での自民党県連セミナーでこんなことまで言い出した。

「現行の年金制度に決して不安はない。今まで見たことのないような(年金積立金の)運用益が、アベノミクスなどの影響で出てくると確信している」

 株高で年金の運用益が大きく増えるから、制度を改革しなくても年金財政の破綻は防げるという説明だ。

「年金博士」として知られる社会保険労務士の北村庄吾氏は、田村大臣の説明は嘘だと断言する。

「年金積立金は6割が債権で運用され、国内株による運用は1割強にすぎない。いくら株価が上がっているとはいえ、株の運用益は全体から見ればわずかです。今後の年金給付費の増加を考えるとアベノミクスによる年金運用益など焼け石に水です」

 次の数字をみれば素人にもわかる。国民がこれまでに貯めた年金積立金は現在約149兆円あるが、厚労省は公的年金の「過去債務」を550兆円と試算している。「過去債務550兆円」とは、現在の年金加入者に決められた年金額を支払うためには、149兆円の積立金と今後の保険料収入を合わせても、まだ550兆円足りないという意味である。年金財政が完全に破綻していることがわかる。

 それを株高でカバーするのは、ヘッジファンドの天才ディーラーでも不可能だろう。

※週刊ポスト2013年5月31日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

山田和利・裕貴父子
山田裕貴の父、元中日・山田和利さんが死去 元同僚が明かす「息子のことを周囲に自慢して回らなかった理由」 口数が少なく「真面目で群れない人だった」の人物評
NEWSポストセブン
国内未承認の危険ドラッグ「エトミデート」が沖縄で蔓延している(時事通信フォト/TikTokより)
《沖縄で広がる“ゾンビタバコ”》「うつろな目、手足は痙攣し、奇声を上げ…」指定薬物「エトミデート」が若者に蔓延する深刻な実態「バイ(売買)の話が不良連中に回っていた」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博を視察された秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
【美しい!と称賛】佳子さま “3着目のドットワンピ”に絶賛の声 モード誌スタイリストが解説「セブンティーズな着こなしで、万博と皇室の“歴史”を表現されたのでは」
NEWSポストセブン
8月27日早朝、谷本将志容疑者の居室で家宅捜索が行われた(右:共同通信)
《4畳半の居室に“2柱の位牌”》「300万円の自己破産を手伝った」谷本将司容疑者の勤務先社長が明かしていた“不可解な素顔”「飲みに行っても1次会で帰るタイプ」
NEWSポストセブン
騒動から2ヶ月が経ったが…(時事通信フォト)
《正直、ショックだよ》国分太一のコンプラ違反でTOKIO解散に長瀬智也が漏らしていたリアルな“本音”
NEWSポストセブン
ロシアで勾留中に死亡したウクライナ人フリージャーナリスト、ビクトリア・ロシチナさん(Facebook /時事通信フォト)
脳、眼球、咽頭が摘出、体重は20キロ台…“激しい拷問”受けたウクライナ人女性記者の葬儀を覆った“深い悲しみと怒り”「大行列ができ軍人が『ビクトリアに栄光あれ!』と…」
NEWSポストセブン
谷本容疑者(35)の地元を取材すると、ある暗い過去があることがわかった(共同通信)
「小学生時代は不登校気味」「1人でエアガンをバンバン撃っていた」“異常な思考”はいつ芽生えたのか…谷本将志容疑者の少年時代とは【神戸市・24歳女性刺殺】
NEWSポストセブン
大谷の「二刀流登板日」に私服で観戦した真美子さん(共同通信)
「私服姿の真美子さんが駆けつけて…」大谷翔平が妻を招いた「二刀流登板日」、インタビューに「今がキャリアの頂上」と語った“覚悟と焦燥”
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚を発表した(左・Instagramより)
《お腹にそっと手を当てて》ひとり娘の趣里は区役所を訪れ…背中を押す水谷豊・伊藤蘭、育んできた3人家族の「絆」
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
《前科は懲役2年6か月執行猶予5年》「ストーカーだけでなく盗撮も…」「5回オートロックすり抜け」公判でも“相当悪質”と指摘された谷本将志容疑者の“首締め告白事件”の内幕
NEWSポストセブン
硬式野球部監督の退任が発表された広陵高校・中井哲之氏
【広陵野球部・暴力問題で被害者父が告白】中井監督の退任後も「学校から連絡なし」…ほとぼり冷めたら復帰する可能性も 学校側は「警察の捜査に誠実に対応中」と回答
NEWSポストセブン
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン