ビジネス

「黒いダイヤ」オオクワガタ 外国産の輸入解禁で相場が下落

 昆虫の人気ランキングで必ず1位争いをするクワガタムシ。なかでもオオクワガタは、野外での採取が難しく個体であればまるで宝石のような価格帯で売買されたことから「黒いダイヤ」と呼ばれたこともあった。1999年には、とある専門店がオオクワガタに1000万円という値段をつけ話題になったが、今では考えられないとクワガタムシの情報誌『BE KUWA(ビー・クワ)』(むし社)編集部の中村裕之さんは言う。

「当時も、1000万円という値段がついただけであって、実際に購入した人はいなかったと言われていました。それでもあの頃は、大きなオオクワガタにそのくらいの値段がついても不思議ではない雰囲気がありましたね。今ではインターネットオークションで個人もクワガタ販売をする時代ですので、価格はかなり下がりました」

 実際にオークションサイトで「クワガタ」と検索してみると、オオクワガタでも数百円、なかには雄雌ペアで1円という格安のものもある。専門店ではさすがにそこまで安くはできないというが、それでも雌雄ペアを数千円で購入できる。かつての高騰ぶりを思えば手ごろな値段に落ち着いている。

「十年以上前は80ミリの大きさで1万円だとしたら81ミリは2万円、82ミリなら4万円という具合に、1ミリ上がるごとに値段が倍になるような時代でした。今でも大きなものは人気ですが、1ミリの違いで倍になるということはありません。大きな個体を育てるには技術が必要なのですが、『菌糸ビン』が普及したことで、比較的、誰でも大きく育てられるようになった影響が大きいでしょうね」(前出・中村さん)

 菌糸ビンとは、キノコ菌糸で真っ白になったオガクズ入りの瓶のこと。1990年代から普及し始め、オオクワガタなどの幼虫を育てるために利用され、大きな個体を育てやすい。値段も400円~1000円くらいと手ごろで、それまでに比べて簡単に大きなクワガタを育てられるようになった。子どもでも70ミリぐらいの大きさに育てられるという。

 さらに、1999年11月に規制緩和で外国産クワガタの輸入が解禁されたことも価格を落ち着かせた要因だという。

「人気が高いオオクワガタは野外で捕まえるのが難しかった。だから価格も高かったのですが、輸入解禁後は手ごろな値段で買えるようになりました。このころから、クワガタ飼育をする人が増えています。技術が高い人なら90ミリくらいの大きなものを育て上げることも。さすがにそこまで大きいと、世界にひとつしかありませんから今でも10万円ぐらいの値段はつくでしょう。特別な技術で、私には育てられません(苦笑)」(前出・中村さん)

 クワガタの飼育人口が増えた影響で専門店も増え、『BE KUWA』誌の人気企画「美系オオクワガタ・コンテスト」も1999年から始まった。いまでは同コンテストには老若男女、全国の様々な人から自慢のクワガタ写真が送られてくる。

「クワガタは、大事に飼ってあげれば5~6年は生きます。昔は、飼育環境を整えるのに木を砕いたりするところから始めなければいけませんでしたので、敷居が高いものでした。でも、いまはずいぶん簡単になり子どもや女性でも楽しめます。犬や猫のように、ペットとして可愛がるような感じで飼っていますね」(前出・中村さん)

 ひと昔前のように、クワガタで一獲千金というわけにはいかなくなった。しかし、子どものころに叶わなかったオオクワガタを飼う夢をかなえるには、ちょうどよい時代になったようだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン