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リコー訴訟の裏側「今後は好況リストラが増える」と識者警告

 円安による為替要因やアベノミクス効果が重なり、押し並べて好業績に沸く日本企業。だが、その裏で苛烈なリストラが“奏功”したことも忘れてはなるまい。

 今年、6年ぶりに増収に転じたリコーも、2011年5月から実施した国内外1万人に及ぶリストラ計画を断行し、それが業績回復の下支えとなった。社員2人が強引な出向命令の無効を訴えていた裁判では、会社側の容赦ない「退職勧奨」の手口が明るみになった。

「原告をはじめ、これまで本社や研究所で製品開発の実績を上げてきたような40、50代の管理職でも次々とリストラ候補に挙げられるような状態が続いた。退職を勧められて断れば、東京湾岸にあるリコーの物流倉庫への出向を命じられ、空調のきかない部屋で重たい部品の仕分けや検品作業といった肉体労働が課せられる。給料は下げられ、体もボロボロになって自ら会社を去っていくのを待つといったやり方だった」(全国紙経済部記者)

 こうしたリコーのリストラ工作について、東京地裁より11月12日に「人事権の乱用で出向は無効」との判決が下された。裁判官は<キャリアや年齢に配慮したとはいえず、身体的・精神的に負担が大きい業務と推察される>と指摘したのだ。

 今回の判決について、『非情の常時リストラ』などの著書がある人事ジャーナリストの溝上憲文氏が見解を述べる。

「通常、親会社から子会社へ社員を異動させる出向の場合は、本人の同意は必要ありません。でも、給料を大幅に減らしたり、本人のキャリアが活かせない畑違いの職種への出向を命じたりすれば、社会通念上に照らして合理性に欠ける。不当な配置転換と認定される判決が出ることはよくあります」

 まさに、出向という名の「追い出し部屋」に近い。電話やパソコンもない部屋に閉じ込め、仕事を与えない追い出し部屋はもちろん人権問題にかかわってくるが、仕事はあってもわざと過重労働をさせるようなケースも卑劣極まりない。

 リコーのようにリストラが一巡した企業の中には、「これからは景気も良くなるし、自分の身は安泰」と思っている社員が多いかもしれないが、そう甘くはない。

「企業はまだまだ余剰の設備や人員を抱えています。景気が良くなると赤字部門も少し回復してリストラを先延ばしにすると思われがちですが、企業にとってみれば業績が上向いて退職金の割り増しを払える余裕のある今こそリストラをしやすい時期。これからは“好況リストラ”が増えていく恐れもあります」(前出・溝上氏)

 内閣府によれば、企業内失業者は465万人(2011年9月時点)もいる。また、東京商工リサーチの調査では、2013年に希望・早期退職者募集の実施を公表した上場企業は53社(11月8日現在)で、募集人数の合計は2年連続で1万人を上回っているというデータも出ている。アベノミクスはどこ吹く風、企業のリストラは相変わらず続いているのだ。

 さらに、企業が安定的な成長基盤を目指すほど、リストラ懸念は増していく。

「例えば、M&A(企業の合併買収)によって買収される会社の余剰人員が簡単に切られたり、逆に赤字部門を別会社にして売却することで人件費カットを図ったりするようなケースもある。そうして社員は自分の意志に関係なく何度も転籍を余儀なくされ、リストラされるリスクが高まっていくのです」(溝上氏)

 景気が良くなっても「肩たたき」の恐怖がつきまとう時代。サラリーマンには急激な労働環境の変化に耐え得る強い精神力も求められているということか。

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