インフルエンザを含むさまざまな感染症を防ぐとして、有望視されているのが“免疫力”。順天堂大学医学部・免疫学講座の竹田和由准教授は、免疫によるインフルエンザ対策について、こう解説する。
「免疫には、2つの種類があります。ひとつは“自然免疫”。これは、免疫の最前線で働き、体の中に入ってきた異物を排除しようとするものです。代表的なものに、NK(ナチュラルキラー)細胞があります。自然免疫の特徴は、さまざまな敵を攻撃できる代わりに、相手の見極めがちょっと甘いこと。また、スピーディーな対応はできるのですが、病気を完全に防いだり、治したりすることはできません。
もう一方の“獲得免疫”は、いわばプロの戦闘集団。敵を確実に見極め、病気を防ぎます。ただし、獲得免疫は、敵の顔を知らないとまったく反応できないという弱点が。そこで、活躍するのがワクチンです。ワクチン接種によって、あらかじめ敵の顔を覚えさせておけば、いざウイルスが入ってきたときに、獲得免疫に素早く行動を起こさせることができるのです」(竹田准教授)
これまで、「自然免疫をつかさどるNK細胞を活性化し、インフルエンザなどにかかりにくくする」として知られていたR-1乳酸菌。この度、竹田准教授によって、この乳酸菌が「ワクチンの効果を高める可能性がある」という興味深い研究結果が発表された。
研究には、インフルエンザの予防接種を受ける男子大学生がインフルエンザ予防接種の前後13週間、R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを毎日1本(112ml)摂取。その結果、R-1乳酸菌を使用したヨーグルトを飲んだグループでは、飲んでいないグループに比べて、インフルエンザ抗体の量が増えるなど、ワクチンの効果が明らかに高まっていることがわかった。
「一般的に、乳酸菌が効果を現すまで約2週間かかるといわれます。ワクチンの効果アップを期待するなら、予防接種の2~3週間前からR−1乳酸菌を使用したヨーグルトを毎日摂ると良いでしょう」(竹田准教授)
■重症度は呼吸数でチェック
それでも運悪くインフルエンザにかかってしまうこともあり得る。疑わしい症状があった場合、すぐに医療機関で検査を受ける必要がある。抗インフルエンザウイルス薬は、発症後48時間以内に服用しないと効果が出ないため、迅速な対応が必要だからだ。鈴木教授は、インフルエンザの症状を見極める手段として、呼吸数のチェックを勧めている。
「インフルエンザにかかると、体は高熱を発してウイルスを退治しようとします。しかし、体力に乏しい子供や高齢者には、発熱する体力さえ足りないこともあります。その場合、熱がないからとインフルエンザの症状を見逃してしまう可能性があるのです」(鈴木教授)
そこでチェックすべきは、呼吸数。1分間の呼吸数が、5才以上で30回以上、1~4才で40回以上、1才以下で50回以上なら重症の危険がある。
「仮に深夜に子供の体調が悪くなったとき、救急病院などに連絡する際には、体温や咳の有無など、ほかの症状とともに呼吸数を伝えることで、正確な診断をする助けになります」(鈴木教授)