哺乳動物である人間にとってきわめて自然な「性別役割分担」のシステムを崩壊させ、出生率を低下させたのは、「男女雇用機会均等法」以来の政府の誤った政策が原因──産経新聞に載った“刺激的”なコラムは、その筆者が安倍首相のブレーンといわれるNHK経営委員の長谷川三千子氏(67)だったことも手伝って反響を呼び、朝日新聞も記事で大きく取り上げた。国家の存亡にかかわる少子化を憂う長谷川氏の“正論”は、“暴論”という言葉では片付けられない説得力を持つ。
産経新聞の「正論」欄に哲学者で埼玉大学名誉教授でもある長谷川氏の「年頭にあたり『あたり前』を以て人口減を制す」が掲載されたのは1月6日。日本の少子化問題の解決策は、夫が働きに出て、妻が家を守る〈性別役割分担〉であり、男女雇用機会均等法以来の政府や行政は〈「個人の生き方」に干渉してきた〉ので、〈今こそその誤りを反省して方向を転ずべき〉と主張した。
このコラムはツイッターで2000件以上の意見が書き込まれ、賛否両論がネットに飛び交った。朝日新聞は1月28日朝刊の「ニュースQ3」欄で「NHK経営委員・長谷川氏が男女共同参画を批判したの?」との見出しで取り上げた。
「朝日新聞の記事は、NHK経営委員である私が男女共同参画社会基本法や政府の姿勢を批判したという点に注目して取り上げましたけど、私のコラムの主題は少子化問題──このまま少子化を放置しておくと、日本は確実に消滅する、ということへの危機感なんです」(長谷川氏。以下「」内同)